多摩地域での最高所は、同時に東京都の最高地点でもあるのですが、奥多摩町の「雲取山」山頂(2017m)です。
そのような高くて展望のきく地点は、測量の基準となる三角点を設置するにはもってこいの場所です。ですから雲取山の山頂には一等三角点が設置されました。明治16年(1883)のことです。
雲取山に登って三角点を探すと、写真のように三角点の標石が3個もあります。明治16年という日本の地図作成の初期段階に設置した正・副2点(右端の台形状の大小2点)と、現在管理されている昭和62年設置の1点(左側)です。明治初期に設置された三角点の残っているところは今では全国でも数か所しかなく、とても貴重なもののようです。これなどは絶対「文化財」の候補ですね。ですからその脇には貴重なものであることを記した説明板が設置されています。(中央の赤っぽい石で作られたもので、一番存在感があります)
国立天文台の一等三角点(2020.1.27のブログ)と違って、この三角点を見ようとすれば本格的な登山をすることになり、一般的には山中1泊の行程になります。山頂から少し下った雲取山荘という山小屋を利用することになるでしょう。
三角点の中には、雲取山のようにアクセスが困難で不便な場所に設置されているものが少なからずあります。花崗岩製で重量のある三角点の石標は、今であればヘリコプターで簡単に運び上げることができるのでしょうが、明治期にはそれを人の手で担ぎ上げたわけで、地図つくりのために多くの人たちが流した汗を思わずにはいられません。