歌舞伎

歌舞伎の観劇はいつも楽しみにしていますが、今年初めての観劇で「ニ月大歌舞伎」に行くことができました。

歌舞伎座(歌舞伎座の手拭い)

二月の歌舞伎は十三世片岡仁左衛門の追善狂言として、『菅原伝授手習い鑑』の一幕「加茂堤」、ニ幕「筆法伝授」、三幕「道明寺」が通し狂言で上演されました。『菅原伝授手習鑑』は菅丞相(菅原道真)が政敵の藤原時平の中傷によって太宰府に左遷される話しです。十三世仁左衛門の当たり役だったという菅丞相を当代の仁左衛門が演じました。

歌舞伎座に着き、先ずはいつものように幕間の楽しみのお弁当を買うと、後はわくわくしながら開演を待ちました。いよいよ幕が開き、一幕目「加茂堤」の相思相愛の二人、醍醐天皇の弟・斎世親王と菅丞相の養女・苅屋姫との密会の場から三幕目「道明寺」の菅丞相が苅屋姫との別れをおしみつつ迎えの判官代と共に太宰府に向かう場までがあっという間に過ぎていき、菅丞相の哀れを思いつつ片岡仁左衛門にウットリ…、万来の拍手と共に幕が下りました。お楽しみのお弁当は一幕目が終わった後に美味しく頂きました。

『菅原伝授手習鑑』は義太夫狂言の一つですが、義太夫狂言の時には舞台上手(向かって右側)にある御簾の掛かった床と呼ばれる場所で浄瑠璃、三味線が演奏されます。今回の舞台でも3幕を通して、三味線の音とその音に乗った浄瑠璃の朗々とした語りによって芝居の背景が描かれ、物語も展開して行きました。太棹三味線の豊かな音量と低い音色・浄瑠璃の力強い語りから成る名調子そして役者仁左衛門の動きの間・呼吸が見事に一つになったとき「あー、素晴らしい。」と感じ、その空気の中に引き込まれてしまいました。その時、大向こうから「松嶋屋」の声がかかりました。片岡仁左衛門の素晴らしい芸と思わず「綺麗」と言ってしまった品のある美しさを終始堪能した観劇でした。