青梅市景観形成重要資源
概要
青梅市では平成16年(2004)2月15日に「青梅市景観まちづくり基本方針」が決定され、青梅市の美しい景観を育むことに関して必要な事項を定めることにより、優れた景観づくりを計画的に進め、誇りと愛情の持てる、暮らしやすいまちの実現に寄与することを目的とした「青梅の美しい景観を育む条例」が同年10月1日から施行されました。この条例のなかには景観の形成に重要な役割を果たす歴史的建築物や石積み等の土木構造物、樹木などを指定し、保全を図り、将来に伝えていくことを目的とした「景観形成重要資源」の制度があります。
条件
平成17年(2005)には「青梅宿の景観を育む会」が結成され、青梅駅周辺景観形成地区(西の森下町から東の西分町)までの景観形成重要資源の候補としては、青梅の歴史的変換を物語る各時代の建築的特徴を持つ建物であり、
① 街道筋の拠点として賑わいを見せた青梅宿の基調となる建物(店蔵・町屋等)
② 産業の発展に伴う青梅の近代化を物語る建物(工場・事務所・蔵等)
③ 近代化の中で取り入れられてきた流行の意匠を物語る建物(近代建築・近代和風建築・看板建築等)
④ 長く利用されていく中で特徴的な外観が既に青梅宿の歴史的景観になじんでいる建物。
指定
上記の条件を考慮し、まず家屋台帳の中から建築年代調査により256件を選出、次に明治期から昭和初期に建てられ現存しているものを82件選び、さらに江戸時代から現在まで続く歴史を伝える趣のある建物を37件、その周辺13件に絞り、ヒアリング調査を実施し、助成を受けての改修計画や景観形成重要資源指定の意向を確認した結果、37件の候補が選ばれました。その中から平成20年(2008)7月15日に「寿々喜家」が、同年10月10日に「大正庵」・「もりたや(現在は取り壊ししで更地)」・「榎戸邸」・「山崎邸」・「高野邸」の6棟が、平成28年(2016)に青梅織物建築群のうち3棟が所有者の同意を得て、景観形成重要資源に指定されました。
建物の内容
Ⅰ、榎戸邸
榎戸邸は、青梅駅右側のセブンイレブンの通りを、図書館に向かい、図書館通りに突き当たった左側の角の建物です。昭和初期に建てられた木造2階建ての近代和風建築の建物です。外壁は板張りで1階部分のひさしと2階部分の木の手摺りがとても良く調和していて、屋根やひさしの間から覗いている漆喰部分も窓や玄関の格子と良く調和しています。

Ⅱ、大正庵
大正庵は、青梅街道の「S&Dたまぐうセンター」の相向い側にあります。明治に建てられた木造2階建の看板建築の蕎麦屋です。蕎麦屋としての創業は大正元年(1912)で古くからの営業です。入口には木の看板に「きそば」と書れ、その上の瓦のひさしは横の二つの窓と同じでとてもモダンであり、両隣のお店と調和良く並んでいます。

Ⅲ、ほていや(現ゲストハウス「青龍kibako」)
ほていやは、青梅駅前旧青梅街道の信号を右(西)に約50m向かうと左側に両隣2軒の人形店に挟まれている昭和初期に建てられた木造2階看板建築で、以前はおもちゃ屋さんだった建物です。正面全体は銅板で覆い、2階のバルコニーには、人造石の付柱があり窓のU字型と戸がとてもハイカラでお洒落です。

Ⅳ、寿々喜屋
寿々喜屋は、青梅駅前から旧青梅街道に出る手前、左へ入る中通りを東に100m程歩いた商店街の左角にあります。大正から昭和初期に建てられた木造3階建ての近代和風建築の日本料理店(鰻屋)です。玄関の前にある松ノ木と白壁に茶色の手摺りが調和良く「寿々喜屋」と書かれた灯籠風の看板もお店の雰囲気ととても合っています。また、松の木の根元には鰻塚があります。

Ⅴ、もりたや(当時の建物)
もりたやは、住吉神社を背にして延命寺(おうめ七福神に一つ)に向かう坂の左側にありました。明治期に建てられた木造2階建ての料理店でした。外壁は板張りで、1階と2階の屋根に下には提灯が飾られており、外灯もモダンで1階部分の板塀や2階部分の手摺りや窓も時代劇に出て来そうな趣が感じられる建物でした(現在は老朽化のため取り壊した)。

Ⅵ、山崎邸
山崎邸は、旧青梅街道住江町の信号を西分町(東)方面に向かうと直ぐ右側に建っている白い漆喰壁の江戸後期に建てられた木造2階建ての店蔵造りの家で す。黒い屋根と白い漆喰壁のコントラストが当時の店蔵の趣を感じさせます。

Ⅶ、高野邸
高野邸は、西分町の旧青梅街道沿い西分一丁目信号そばの左側にある江戸時代後期に建てられた木造2階建ての店蔵造りの家です。2階部分の両側板張りの外壁と真ん中に漆喰の白い蔵の観音扉が目立つ建物です。

Ⅷ、青梅織物協同組合建物群
青梅織物協同組合建物群は、広大な敷地内に建てられ、大正から昭和にかけて織物の町として全国に名をとどろかせた青梅の面影を色濃く残しています。青梅織物協同組合事務所は、同組合の事務所として建築、品評会などの会場として使用されました。現在も同組合事務の事務所として使われています。地域の織物産業の歴史展示室を設け、青梅の織物の歴史を伝えています。周辺地区は景観形成地区としてその歴史的な価値が認められています。

※江戸時代から青梅宿として栄え発展した青梅です。旧青梅街道沿いには歴史的建築物等も今なお多く残されています。東の西分町から西の森下町まで街並みを見ながらゆっくり歩いてみると、江戸時代から昭和初期の建物と大きな家・土蔵・昔はお店や旅籠だったと思われる建物が並び新たな発見があると思います。是非歩いてみて下さい。
地図

◎参考資料
青梅市文化財ニュース 第261号