「石川町龍頭の舞」が奉納される「西蓮寺」と「御嶽神社」を訪ねて

 まだ蝉の鳴き声が賑やかな頃、八王子市石川町にある「石川町龍頭の舞」の舞台・「西蓮寺」「御嶽神社」を訪ねました。

「西蓮寺」

 「西蓮寺」は、大日如来を本尊とする真言宗智山派の寺院で、天正元年(1573)に創建、頼重法印により開山されました。正保2年(1645)頃本堂を焼失しましたが、享和3年(1803)に再建されています。

 境内には、本堂、薬師堂、鐘楼堂が配置されている他、弘法大師像、六地蔵さんが安置されています。

 鐘楼は、鐘楼堂と共に明治29年(1896)に石川文右衛門により寄進されましたが、太平洋戦争の折に供出され、現在のものは昭和46年(1971)に檀家の石森万蔵氏により寄進されたそうです。

 「西蓮寺」は、多摩四国八十八カ所霊場第81番札所になっています。

 境内に巨大な欅がそびえているこの寺院の背後には、「八王子市石川町緑地保全地域」に指定された森があります。

「西蓮寺」階段を登ると本堂

本堂

境内の弘法大師像

薬師堂

鐘楼堂

西蓮寺境内の欅

「御嶽神社 」                    

「御嶽神社」は、「西蓮寺」の裏手の山の中にあります。神社の周囲は東京都が指定した緑地保全地域となっています。

 日本武尊を祭神とする「御嶽神社」は、古くは西蓮寺境内にあった御嶽権現ですが、明治6年(1873)廃仏毀釈により御嶽神社となりました。

 拝殿の奥には、古い社がありますが、覆屋に囲まれているうえ暗く中を覗いてみてもてよく見えません。何やら彫刻が施された立派な社がありそうです。

 なにしろ山の中なのでヤブ蚊に襲われ、コロナ感染の終息を祈願するや早々に退散しました。

御嶽神社の参道から見た石川町

 

御嶽神社鳥居

 

御嶽神社

「石川町龍頭(りゅうとう)の舞」

 「西蓮寺」と「御嶽神社」を結ぶ「石川龍頭の舞」は、天正元年に西蓮寺境内の権現堂の落成を祝い、村の若者を集めて舞われたのが始まりと言われています。

 戦国時代後期より400年以上に渡り継承されているというこの舞は、2本の角を持つ龍の頭 (かしら)の容貌をした大頭、中頭、雌獅子の3匹の獅子・花笠6人・笛数人・歌唄いで構成され、老若男女の大勢の人がそれぞれの役割で参加します。

    現在、花掛リの舞、竿掛リの舞、太刀掛リの舞を代表的なものとする13種類の舞が伝えられています。

    古くは「西蓮寺」境内で舞い、奉納されていたこの舞は、廃仏毀釈により御嶽権現御嶽神社となった後は、「西蓮寺」と「御嶽神社」の両方で舞が奉納されるようになりました。

 現在も毎年9月の第2土曜日、日曜日の両日に行われ、土曜日は御嶽神社、日曜日には西蓮寺に於いて五穀豊穣、無病息災を祈り奉納されています。

 この「石川龍頭の舞」は、昭和35年(1960)八王子市無形民俗文化財に指定されました。

 「 石川龍頭の舞」の他にも八王子の山間部に残るいくつかの市指定無形民俗文化財の獅子舞が各地域の祭礼などで舞われています。

    もう直ぐ祭りの日が来るので「西蓮寺」、「御嶽神社」に奉納されるこの舞を見たいと楽しみにしていましたが、西蓮寺境内の前のブルーベリー畑で働いていた奥さんは「400年も続くお寺さんで、毎年賑やかに獅子舞が舞われるのだけれど、去年、今年とコロナ禍で中止になって残念ですよ」と話してくれました。本当に残念でした。

 来年は、その舞の様子を紹介できたら嬉しいです。

参考:『八王子寺院めぐり』 八王子市仏教協会青年部

        『石川周辺の歴史』  立川秋雄

   「八王子市指定無形民俗文化財」パンフレット 石川町御嶽神社龍頭の舞保存会

   『石川町会50周年記念誌』  石川町会記念誌編集委員会