少女に寄り添うユーミンと富士塚~西立川駅前の顔

JR立川駅から一つ先の西立川駅へ向かうのだが、どっちの路線で行こうか? 中央線が青梅線に乗り入れる引き込み線経由にするか、立川駅始発の青梅線にするか。どちらも乗車時間は2分ほど。違うのは車窓の風景だ。引き込み線は会社や工場、住宅地の中を走るが、立川駅始発の電車では進行方向右手の車窓に広大な平地と180度の空が展開する。気持ち良さは、言わずもがなでしょ!
電車の発車メロディー「雨のステイション」に誘われて西立川駅で降りる。この駅前の顔を一つ挙げるのが難しい。改札左手正面に国営昭和記念公園西立川口がある。全国に16ヶ所ある国営公園の中で昭和記念公園の年間入園者は最大級の430万人とチョー人気。園内ではよちよち歩きの赤ちゃんから、じいちゃん・ばあちゃんも非日常の解放感に満たされる。

西立川駅北口前は昭和記念公園の入口

入園前に目を止めたいのが、あのユーミン(荒井由実)の歌「雨のステイション」のモデル駅であることをユーミン自身が語っている碑だ。この歌の縁で発車メロディーになった。以前の寂しかった駅前で「会える気がして いくつ人影見送っただろう」と佇んで始発電車を待つ少女の心模様を読んだ歌詞が碑に刻まれている。

昭和記念公園入口に設えられた「雨のステイション」の碑

一方の改札を右手に出て3~4分歩くと、江戸時代のこの地を彷彿とさせる「富士塚」がある。霊峰富士の名は、東国はもちろん、西の都にも届き、万葉集に詠まれてその名を一層とどろかせた。

頂に祀ってある浅間神社

命がけの富士山詣でができたのは男性。富士登山は女人禁制で、女性やお金と足腰に自信がない人らは、この25段の階段の富士塚の天頂に祀ってある浅間神社で平安や健康を祈った。
いまも都内に富士塚は100基以上が現存するという。その一つがここ。周囲のビルや住宅は、塚よりも高いが、古くは塚からその秀麗ぶりが拝めた。所在地の立川市富士見町の地名がそれを物語る。いまもここより南の立川崖線の段丘縁から見える山並みから抜きん出た白富士が望める。

掃き清められている富士塚