会社を退職して、地域の何かに関わろうと思い、武蔵野市の観光ボランティアガイドに応募したのが2013年の春のことでした。
2005年に武蔵野市に転居してからも退職するまでは市内をゆっくり巡ることなどしていませんでしたから、ガイドに必要な知識など無いも同然です。
ガイド養成の最初の学習コースは吉祥寺と井の頭公園です。
「吉祥寺」という寺の無いことは知っていましたが、実際にある4つの寺のことは分かりません。そこで寺の名前、それに宗派、開山、由緒などを調べました。
その寺の中の一つ「安養寺」のことです。
安養寺が「真言宗豊山派」であることを初めて知りました。しかも「真言宗豊山派」と聞いても「よくわからない」ということで早速Wikipediaの世話になります。
“真言宗豊山派は真義真言宗の一派で、総本山は奈良県桜井市の長谷寺。…”
「長谷寺、そういえば、学生の頃に大和古寺にあこがれて、長谷寺は行ったことがあるなぁ。あの寺がこの宗派の本山だったのか。」と、ちょっと気に止まった程度で学習は続きました。
そして、先輩ガイドさん達の指導の下に、実際に吉祥寺の寺社を巡って基本知識を確認するという研修になり、安養寺に足を踏み入れました。
五日市街道から北に曲がって安養寺山門へ向かいます。山門は数十メートル先にあるのですが、そこに至る参道にちょっと大ぶりな花が続いています。
安養寺で行うガイドで一番重要な事物はこの花の先にあるのですが、それよりも、意味ありげに続く一列の花が気になりました。
「これって、牡丹とちがうかなぁ」と思ったとたん、電気が走りました。
「牡丹に違いない!この寺の本山は長谷寺なんだ!長谷寺は牡丹の名所だ!」と。
学生時代に長谷寺で見た牡丹の風景がうっすらと浮かび上がってきました。
写真はその時に撮ったものです。
その後、春になると安養寺を訪れて牡丹の花を眺めることを続けています。
学生の頃の大和古寺訪問を懐かしく思い出しながら、そして、私の観光ボランティアガイドの最初の1シーンを思い出しながら。
現在、安養寺でガイドをするときには、花が咲いている/いないに関係なく、宗派、本山、そして牡丹の話をするようにしています。