図書喫茶カンタカ~武蔵野の雑木林や柳瀬川などの自然をテーマに

 昨年、アニメーション映画「となりのトトロ」の舞台にもなった狭山丘陵を歩き「落ち葉は堆肥に、木は薪に」と人々の生活と共にあった雑木林本来の姿を取り戻し、里山を保全するという活動に触れることができました。

 それを機に里山と呼ばれる雑木林に関心を持っていましたが、そんな時に、東村山市に雑木林の保全活動に取り組んでいる方が開業した武蔵野の雑木林や柳瀬川などの自然をテーマにした図書喫茶があることを知り、訪ねてみました。

令和2年(2020)12月にオープンした 図書喫茶カンタカは、西武線所沢駅東口から柳瀬川方向に15分ほど歩いたところ、東村山市秋津町と所沢市北秋津の市境にありました。

カンタカとは

お店の名前・カンタカは「となりのトトロ」のカンタ(主人公サツキのクラスメイト)と「もののけ姫」のアシタカ(物語の主人公)を合わせた造語だそうです。

図書喫茶カンタカ

トンボのロゴマークに誘われて

 ロゴマークのトンボは、トンボを古く秋津(アキツ)とよんでいたこと、また、お店の近くにある日月(じつげつ)神社には、「蜻蛉の寄生木」(トンボのやどり木)という今も語りつがれている民話があることから、トンボが秋津の地にゆかりが深いということでデザインされたそうです。

 そのロゴマークに誘われるように入口を入ると、木製の棚に座っているトトロとクロスケが、迎えてくれました。

トンボのロゴマークの図書喫茶カンタカ入口
マスクを付けたトトロが迎えてくれました

柳瀬川の一本橋

 木々が並ぶかのように作られた棚には、オリジナルブレンドのコーヒーや所沢和紅茶等々の商品が並び、壁に飾られた肥沼亞男さんの絵には、柳瀬川に架かる秋津橋が一本橋だった頃の情景が、「わが心のふるさと一本橋」という文章に書かれた思い出とともに描かれていました。

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肥沼亞男さんの風景画ー「わが心のふるさと一本橋」より

わが心のふるさと一本橋

 北秋津村の峯際(みねぎわ)と、その南側の本村一帯(ほんむらいったい)は、柳瀬川をはさんで集落が早くからできたところで、川をはさんで行き来するための橋が、早くからつくられました。この橋は、いまでこそ「秋津橋」といわれていますが、かつては、幅五十㎝、厚さ十五㎝、長さ八mほどの板が渡してあった一本橋でした。⋯▼特に、一本橋の最大の特徴は、北秋津や南秋津の子どもたちやおとなたちも、みんな仲良くこの橋やこの川へ遊びに来たことでした。⋯▼水がよどんだところには、めだかの学校があり、水の葉のたまっているところには、グロテスクな赤腹のイモリもいました。魚はメダカ、ハヤ、タナゴ、クチボソ、フナ、エビ、カニ、ナマズ、キバチのほか、土手(どて)を守るために長い金網(かなあみ)に石をいれておいた砂篭(じゃかご)の中には、ウナギも生息していました。▼橋の下流には、葦(あし)がたくさん生えていて、川とんぼ、しおからとんぼ、おおやんまが飛び交(か)い、時には水辺の宝石(ほうせき)のカワセミもやってきました。▼⋯まさに天国そのものといえる一本橋でした。

(肥沼 亞男「わがこころのふるさと北秋津」より抜粋)

店内に飾られていた文章より

 「わが心のふるさと一本橋」には、自然のなかの温かさと優しさが満ちていて、私も子どもの頃に、兄弟と一緒に川でカジカを見つけたり、田んぼでタニシを探したりした頃の故郷の景色が、懐かしく浮かんできました。

 先に進むと、正面にレジカウンターがありました。茶色く小石を積んだこのカウンターは柳瀬川をイメージして造られたそうで、魚も泳いでいました。

柳瀬川をイメージしたカウンター
 
川をイメージし、曲線を描いたカウンター

カフェスペース

 カウンターで、カレー(ビーフ)とコーヒー(カンタカ)を注文し、カフェスペースに入ると、地元の木材で作ったという壁一面の本棚に並んだ沢山の本が目に入りました。

 本棚には、絵本を初め、芸術、自然等々あらゆる分野の本がぎっしりと並んでいましたが、そのほとんどがオーナーの蔵書というのには驚きました。

図書は、自由に読むことができました。

お茶を飲みながらの読書タイム

 広いカフェスペースには、夫々が異なったデザインの椅子とテーブルが置かれていました。その一卓、一卓のゆったりとした自由な曲線は周りの空間を温かくしているかのように見えました。

 しばらくして、そのテーブルに運ばれてきたビーフカレーをいただきました。

 「家族に食べさせたい食事」をコンセプトに作られたという、西所沢の人気カレー店「negombo33」の山田孝二氏監修のこだわりのスパイスカレーは、じっくり煮込まれたビーフと程よい辛さで、とても美味しかったです(写真を撮り忘れてしまいました)。この日のカレーメニューには、サバ、ビーフ、チキンの3種と2種の盛り合わせがありました。

 食事の後はコーヒーを飲みながらの読書を楽しみました。

 沢山の本の中から先ず手にした絵本・『世界一おもしろい国旗の本』(河出書房)は、国旗が決まるまでの経緯が書かれていて、その名の通りおもしろい本でした。

 雑木林、里山に関する本の中から手にした『里山と人の履歴』(犬井正著 新思索社)は、「人々の生活と共にあった本来の里山を取り戻す」という一冊でした。この分野の本も豊富に揃っていました。また、訪ねてみたいと思います。

 店内のお客さんは、夫々に、好きなテーブルで好みの本を手にし、ゆったりと時を過ごしているかのようでした。

木製のテーブルでお茶と読書

お土産にブレンドコーヒー

木の温もりのあるテーブルでゆっくり過ごした帰りには、オリジナルブレンドのコーヒーを求めました。

 ブレンド・「落ち葉」、「柳瀬川」、「カンタカ」の中から「柳瀬川」を購入しました。お店で頂いた「カンタカ」との違いを味わうのが楽しみです。

参考:図書喫茶カンタカのパンフレット