多摩地区のPFASについて

このブログの構成

はじめに

私は国分寺市に生まれ育って60数年の爺さんですが、生まれた西恋ヶ窪の実家には当初は上水道が来ていなかったため自宅の庭に井戸がありその水を飲んで育ちました。モーターで汲んでいたので蛇口を回せば普通の上水道のように自動で井戸の水が出てきていました。小学校5年生の時に私の地区は上水道が整備されたため、それまでは井戸の水を飲み、その後は上水道の水を飲んで育ちました。上水道になってからも「国分寺市の水道は100%地下水なので美味しい」と中学校の先生が朝礼でお話ししていた記憶があります。そののち地盤沈下を防ぐため「国分寺市の水道は地下水と利根川の水の半々なので美味しい」と地下水の比率は減りましたが、おいしい地下水を求めて真姿池からコーヒー用の水をペットボトルに汲んできて飲んだ記憶もあります。

そんな中、それまで自慢だった国分寺の地下水・湧き水や上水道の水がたいへんな危機が訪れました。それは国分寺の地下水にはPFAS(ピーファス)という科学物質が入っていて地下水を利用している国分寺市の上水道を飲んでいた国分寺市民の方々の血液検査をしたところアメリカの基準の数倍のPFASがほとんどの方から検出されたというものでした。一般の市民の方で血液中のPFAS濃度が高いのならば、わたしの様に幼少のころから井戸水を飲んでいた者はビックリするほど高いに違いないと思っています。今後に機会があればPFASの血液検査を実施してみたいと思います。

今回のブログは一般的なPFASの基礎知識を、次回のブログで「多摩地区(立川・国分寺・府中・西東京)のPFAS最新情報」書いていこうと思います。

PFASの基礎知識

PFASとは

そもそもPFASとは何でどの様な問題があるのでしょうか。

PFASとは、人工的に作られた有機フッ素化合物の総称です。種類は4,700以上といわれています。水や油をはじく効果があり、熱にも強いことから半導体や包装紙、防水服など身近な製品に使われ私たちの暮らしを支えています。ただ、一部は分解されにくく、体に蓄積されるため、人への有害性が指摘されるものもあります。

PFASとは、分解されにくく蓄積されるもの

PFASの健康リスク

2022年、アメリカの学術機関はPFASの血中濃度が高いほどさまざまな健康リスクが上がると指摘しました。

  • 脂質異常症
  • 腎臓がん
  • 抗体反応の低下
  • 乳児・胎児の発育の低下

特に、この4つについて注意を呼びかけています。

健康リスク

血中濃度で1ミリリットルあたり20ナノグラムを超える状態が続く場合は、リスクが高まるとしています。

多摩地区でのPFAS汚染

東京の西部、多摩地区では37か所の地下水で国の値を超えていました。古くから豊かな地下水に恵まれてきた多摩地区。一部の地域では水道水にも利用されてきました。

2020年1月、東京都水道局はPFASに関する情報をホームページで公表。

多摩地区の37井戸で国の指針値を超過

国分寺市の浄水所でも

2か所の浄水所から供給されていた水道水のPFASの濃度です。現在の国の目標値と比べると2倍以上の値が6年にわたり続いていました。

国分寺市東恋ヶ窪浄水所と府中市武蔵台浄水所で、国の目標値の2倍以上の値が6年にわたり続いていた

東京都は濃度が高い地下水の利用を中止。現在、多摩地区の水道水は全域で目標値を大幅に下回っています。

市民グループが血液検査

しかし、住民の不安はこれまで飲んでいた水道水の体への影響を調べるため、多摩地区の市民グループが希望者を募り、血液検査を行いました。分析にあたった京都大学の研究グループは途中経過として273人分の結果を公表しました。

多摩地区273人の血中濃度(PFOS、PFOA、PFHxS、PFNAの合計)
平均 28.1ng/mL

アメリカ指針値 20ng/mL
検査受けた人273人の6割が指針値超える

血中濃度は、平均で1ミリリットルあたり28.1ナノグラム。6割の人は、アメリカの指針値で健康へのリスクが高まるとされる値を超えていました。

汚染源はどこなのか

汚染源はどこなのか。多摩地区の地方議会では解明を求める声が上がっています。
3月、小金井市議会で採択された意見書。アメリカ軍横田基地が過去に泡消火剤の漏えい事故を起こしたとして、汚染源の1つである可能性を指摘しています。

多摩地区の西部に位置する、横田基地。PFASを理由に地下水の利用が停止された11の浄水施設はいずれも基地の東側広い範囲に位置します

ここに地下水の流れのシミュレーションを重ねると、上流に横田基地があるのが分かります。専門家は、汚染源の特定にはより詳しい調査が必要だと指摘します。

汚染井戸の地下水上流に横田基地があるのが分かる

アメリカで呼びかけている4つの健康リスク

  1. PFASの血中濃度が高くなると、例えば肝臓に影響が出て、LDLコレステロールが高くなってしまう、これが「脂質異常症」
  2. それから、ワクチンを打った時などに抗体が上がらなくなる、これが「抗体反応の低下」
  3. また「腎臓がん」等の悪性腫瘍
  4. 重要なのは「乳児・胎児への成長発達への影響」。乳児・胎児というのは環境の刺激に対して大変ぜい弱になので、胎盤を通じてPFASは赤ちゃんに行きますし、母乳を通じてPFASが赤ちゃんに到達する。それによって成長、発達への影響がでてくる可能性があります。

アメリカで呼びかけられている4つの健康リスク

私たちの健康リスクは

一度体に入ったPFASは今後どうなっていくのでしょうか。

半減期といいまして、体の中で半分の濃度になるというのが大体3年から5年というふうに言われております。

PFAS 3~5年 血中濃度半減

摂取が止まれば3年、5年たてば濃度が半減してくるということになります。

日本の対策は

水道水の目標値を見ますと、アメリカは3月規制値の案として1リットル当たり4ナノグラムという数字を出してきたのに対し、日本は暫定値で(PFOSとPFOA)合わせて50となっています。

日本とアメリカWHOの水道水の目標値

今後に求められる対策

行政には以下のような対策が求められると思います。

  • 適切な規制
    判断できる目安を
    研究による裏付け
  • 汚染源の解明・開示
    責任の所在を明確に
    低減策の推進

参考文献等

NHKの番組「追跡“PFAS汚染” 暮らしに迫る化学物質」(2023年4月10日(月)放送)
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4767/