畠山重忠~平家の滅亡と奥州合戦~

義経、頼朝、死す

ついに源頼朝が死んでしまいましたね。NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の話しですが。この2週前に菅田将暉くん演じる源義経も亡くなっているのですよね。弁慶の立ち往生が描かれていませんでしたが、♬京の五条の橋の上~で有名な義経と弁慶が出会った頃にはまだ五条大橋が無かった驚きを考えれば、立ち往生ぐらい無くても私は驚きません。義経の最後を女性に人気のある俳優・菅田将暉くんの笑顔で締めくくったところに、製作者がこのドラマが誰をターゲットにしているかを垣間見た気がします。

頼朝の最期

たくさんの血族や御家人を殺してきた頼朝本人がついに亡くなってしまいました。このドラマでは演出の吉田照幸さんがこの場面を、登場人物ひとりひとりのその時をゆったりと時間をかけて壮大に描いていました。『吾妻鏡』には「頼朝は落馬して死んだ」としか記述がないので、歴史家の方々では糖尿病・心臓病や、歯周病による脳梗塞などの病死説が主流のようです。しかしこれだけ人を殺してきた人物です。暗殺されても不思議ではないですよね。

ドラマでは頼朝、暗殺説か

ここでこのドラマに注目すると、小栗旬演じる北条義時が死ぬ前の頼朝に汲んできた水を飲ませるシーンがあったり、頼朝が亡くなる虫の知らせを示す鈴の音が義時にだけ鳴らないとか、頼朝の容態を見て密かに火葬の準備を始める八田知家に「燃え残っては困るのだが」と義時が言う怖ろしい場面があったりします。どうやら脚本家の三谷幸喜さんは義時による暗殺説を匂わせているようです。

畠山重忠と平家の滅亡

さて本ブログも大河ドラマに追い付けるように畠山重忠を追っていきましょう。

屋島の戦いから壇ノ浦の戦いへ

一の谷の戦いで敗れた平氏は、福原の都(神戸市)を追われ、瀬戸内海を渡って讃岐の屋島(香川県高松市)に新しい本拠地をおきました。頼朝は、中国地方から九州を押さえた後、この屋島を攻撃する作戦をとりました。重忠は、一の谷の合戦に引き続き、元暦元年(1184)9月に源範頼(のりより)に従って西国へと進んでいきます。

『平家物語』などで有名な「扇の的」はこの屋島の戦いでの出来事ですが、『源平盛衰記』には最初に平氏の扇の的を射るように命じられたのは重忠であったと書かれており、重忠が那須与一(なすのよいち)を推薦したので、有名な「扇の的」の場面が展開されるという筋になっています。

文治元年(1185)、平氏軍は義経軍によって屋島からも追われ、豊後国(大分県)に渡った範頼軍と義経軍に挟み撃ちされる形となって、同年3月24日、長門(山口県)の壇ノ浦で滅亡しました。

このあと、11月に頼朝は朝廷から守護・地頭の設置を認められ実質的な幕府の運営に着手し、重忠も幕府の御家人として活躍していくことになります。

文治三年陸奥州合戦之図

奥州合戦

平氏が滅びると、源頼朝は戦いに尽力した弟の範頼と義経を鎌倉へ呼び戻しますが、後白河法皇に目をかけられた義経が、頼朝に承諾を得ないまま官位をもらったことをきっかけに、頼朝は義経を遠ざけるようになります。頼朝に憎まれた義経は京を追われ、鎌倉入りも拒否されたため、奥州藤原氏を頼って平泉(岩手県)に身を寄せました。

文治5年(1189)、藤原泰衡(やすひら)は父秀衡(ひでひら)がかくまっていた義経を自害させ、頼朝のもとに届けましたが、頼朝は義経をかくまったことを許さず、藤原氏を討つため奥州へ出陣しました。このとき重忠は陣の先頭にたつ先陣という名誉な役割をつとめています。

また藤原氏の築いた阿津賀志山(あつかしやま・福島県)の堀を工夫を使って埋めてしまうなど、大きな働きをしました。

阿津賀志山防塁
阿津賀志山の中腹から阿武隈川沿いに3.2kmに及びます。並行する2本の堀と土塁からなります。山麓は主要交通路である奥大道が通る要所であるため、激戦が展開される地となりました。

怪力伝説

なお藤原氏を平定して鎌倉に戻った頼朝は、平泉で目にした毛越寺(もうつうじ)や中尊寺(ちゅうそんじ)といった大寺院をまねて鎌倉に永福寺(ようふくじ・現廃寺)を建立しました。その工事の際、怪力で知られた重忠は大石をひとりで運び、周囲の人々を驚かせたと言われています。この他にも関東一の力士・長居(ながい)と取り組みをしたとき、肩をひとつかみして長居の肩の骨をばらばらに砕いてしまったなどという話も伝えられており、逸話をそのまま信じることはできないまでも、重忠は相当の怪力の持ち主であったといえるでしょう。

 

絵馬「重忠力持石」

永福寺復元図
薬師堂・二階堂・阿弥陀堂は廊によって一直線につながり、L字形の翼廊を付けています。伽藍は東を向き前面に池を中心とした庭園が設けられていました。

次回は

さて、やっと鎌倉幕府が始まりました。鎌倉幕府での重忠の活躍です。楽しみに待っていてくださいね。