ミノムシ(チャミノガ)の生態と儚い一生

〖ミノムシとは〗
人家の庭先に植栽されたカエデにミノムシを見つけた!思えばミノムシを見るのは何年ぶりかな?最近は見かけなくなった昆虫である。名の由来は、農家の人たちが纏っていた“蓑”に似ているので名付けられたという。
ミノムシは蓑(巣)をつくり、この中で幼虫期を過ごすミノガ科のガの幼虫であり、人家の近くに生息する。日本には約20~30種前後生息していると言われ、比較的多く見られるのはチャミノガとオオミノガである。チャミノガは、葉と小枝がたくさん付いた“細長い筒状の蓑”を作るのに対し、オオミノガは、葉を使って“中央部が太く両端が細い蓑”を作る。ミノムシの蓑は同じような形で作られオスの蓑、メスの蓑の区別が付かない。
このブログでは〖チャミノガ〗について記述します。
「チャミノガの蓑…葉と枝で作られた巣  撮影日…2021.11.23」
「オオミノガの蓑…葉で作られた巣  撮影日…2021.12.05」
〖ミノムシ(チャミノガ)の一生〗
★過年11月~4月頃
ミノの中で暖かくなる春を待つ
★5月上旬~6月中旬頃
《オス》の幼虫は頭部に、まだら模様があり体は細めで灰色をしていたが5月頃になると灰色から黒みを帯びてくる。そしてミノの中で脱皮をして蛹になり、頭部を下にして(蛾となって飛び立つため)いっそう黒くなり、鎧を纏っているようになる。やがて、背中に翅のようなものができ、蛹から1~2ヶ月後、早朝に羽化となる。ミノの下からたくさんの毛に覆われた翅と大きい目をした成虫の姿が現れ、体長約15㎜、翅を広げた長さ約25㎜というオスの誕生である。驚くことに羽化したオスには口がなく食べる事ができない!そして羽化した後は交尾して数日で一生が終わる。「オスの蛹…頭(右側)に触角と複眼がある 写真…チャミノガの一生より」
「オスの誕生…多くの毛に覆われている  写真…チャミノガの一生より」
《メス》は下記の写真のごとく、ずんぐりとした体形で赤みを帯びた幼虫でオスより遅れて脱皮して蛹となる。ここで驚くことは頭部、胸部、腹部の区別が不明で触角、複眼、翅、足など成虫になるための器官がないこと。又、メスは蛹の期間がオスよりも短く少し早く成虫になる。体は薄い黄色をしていて頭部、胸部は小さく腹部は大きい。そして、腹部の先には卵を産む管ができる。メスの成虫は夕方になると、ミノの下から頭を出してオスを呼び込む。「メスの蛹…脱皮したばかりの姿とぬけ殻 写真…チャミノガの一生より」
《交尾&産卵》自然界の仕組みに驚かされる!メスの交尾器は上部にある。図の如く、オスの交尾器はメスの頭部と抜け殻との間を探り当て、奥に向かって伸ばしていく。こうして交尾が成り立ち、オスは交尾器を縮めて元に戻し別のメス探しに飛び去る。メスは自分の脱いだ蛹の殻の中に、1000個前後の卵を産み、体はだんだん小さくなって三分の一程度に縮んで一生が終わる「チャミノガの交尾の図   写真…チャミノガの一生より」
「上…産み終えてしぼんだメスの体 下…蛹の殻にぬけ殻に約1000個の卵を産む。写真…チャミノガの一生より」
            【新しい生命の始まり】
★7月上旬
卵は、楕円形で長さ1㎜くらいで産卵後20日前後で孵化し、ミノの下の口から飛散していき、厳しい自然の中で生きていかなくてはならない。
★7月上旬~9月頃
オスの幼虫は大食漢でチャ、カエデ、サクラ、イトヒバ等々の広葉樹・針葉樹の葉を好んで食べる。
★10月~11月頃
冬を越すための場所を探してミノ(新しい蓑=住居)を作り、越冬の準備に入る。
〖ミノムシの天敵とは⁈〗
天敵は、人家の周辺に生息しているシジュウカラ科の野鳥であるシジュウカラとヤマガラである。この野鳥は、木の枝に付いているミノムシの巣をクチバシで嚙み落として食べてしまう。

参考文献
ミノムシは鬼の子か? チャミノガの一生
著者・・・いぬい みのる
発行所・・・大日本図書株式会社