福禄寿と寿老人 ?

身近な神仏を知るとして続けてきたこのシリーズも、正月をはさみ、七福神の中から毘沙門天(四天王の一つ)、弁財天、大黒天、えびす様、布袋様と比較的馴染みのある福神を連ねてきた。残りの二神は福禄寿と寿老人であり、本日ご紹介することになった。福の神であると聞いているという以外には、どちらかが長~い顔の老人だったとの印象はあるが、それと名乗る仏像に出会うことも少なく、来歴や効能については、これまであまり聞き及んだ記憶がない。

福禄寿 ?

古い中国の仙人が神格化したと言われ、「福(子宝を得る幸福)と、禄(生活の安定)と、寿(長寿)を授けるという神様」で、背丈が低く、長い頭を持ち、長い顎鬚をはやして、大きな耳たぶをもち年齢は千歳という。右手に枕を抱え左手に宝珠を持った姿等で、長寿の象徴である鶴をお供に従えている。中国、道教の長寿神。南極老人星(後述)の化身であり中国の村や町に住み、人々の信仰を集めたといわれる仙人として信仰されている。 福禄寿はもともと福星・禄星・寿星の三星をそれぞれ神格化した、三体一組の神である。

橘守国(江戸中期の狩野派町絵師)画の福禄寿

 

小石川七福神の福禄寿(現東京ドーム…旧小石川後楽園内)

 

和倉温泉の信行寺の福禄寿

寿老人 ?

寿老人は、道教の神仙で、中国の宋代、元祐年間(1086~93)の人物と伝えられ、その偶像化といわれている。不死の霊薬を含んでいる瓢箪を運び、長寿と自然との調和のシンボルである牡鹿を従えている。手には、これも長寿のシンボルである不老長寿の桃を持っている。頭が極端に長いのが特徴的な「寿老人」。そんな寿老人の長い頭には、「知恵者ほど重い頭を垂れるべき」という意味が込められているようで、人徳のある老人は、頭が良く広い見識と礼儀を兼ね備えているものといわれる。長寿延命、富貴長寿の神として信仰されている。

 

橘守国(江戸中期の狩野派町絵師)画の寿老人

 

 小石川七福神の宗慶寺/寿老人

           

和倉温泉の信行寺の寿老神

 

福禄寿と寿老人

寿老人は、日本では七福神として知られているが、福禄寿とこの寿老人とを同一神と考えられていることから、七福神から外されたこともあり、その場合は、吉祥天や猩猩(しょうじょう、猩々)が入る。日本には禅宗伝来後における水墨画の発達に伴い、その画題の一つとして移入されたものらしい。寿老人は、布袋、福禄寿とともにのちには七福神の仲間入りをして福徳神の一つともされた。しかし寿老人は瑞祥の象形とはされたが、個別に福神として信仰されるには至らなかった。

なお、南極星の化身ともいわれる長頭短躯の福禄寿と寿老人は似た性格をもっていて、異名同体とされるなど、かなり混同されてもきて、共に南極老人星の化身と考えられている。南極老人星(カノープス:りゅうこつ座α星…りゅうこつ座で最も明るい恒星で全天21の1等星の1つ。太陽を除くとシリウスに次いで全天で2番目に明るい恒星)を神格化した道教の神で、南極仙翁、寿星とも。『西遊記』『白蛇伝』など小説や戯曲に神仙として登場することも多い。古くから、南極老人星は戦乱の際には隠れ、天下泰平のときにしか姿を見せないという信仰が存在し、宋代以降に南極老人として神格化され、長寿と幸福を司るものとされた。

寿老人は鹿をつれている、福禄寿は鶴をつれているという決定的な違いはあるものの七福神の絵では、何も連れていない像がほとんどで、一般的には異常に頭の長いほうが福禄寿と覚えたほうが簡単のようだ。

 

談山神社の福禄寿大神

ここまで見てきていただいた福禄寿も寿老人も、寺社の奥深くに秘めて納められて信者の信仰を受容してきた如来・菩薩や天のようなおごそかな像容をしているとはいいがたく、庶民が気軽に参拝してお声かけさせていただくことを想定したお姿が多いようで、寺社の本尊・重要仏にはなりえない神仏であるようだ。そんな福禄寿の中でも、天智天皇と中臣鎌足が大化の改新を企てた、錦秋の素晴らしい奈良多武峰の談山神社の総社拝殿には、大きな木彫の福禄寿大神像が祀られている。このお像は、多武峰に自生するケヤキから彫り出されたもので、総高は3mと、福禄寿像としては全国屈指の大きさであり、毎年福禄寿大神大祭を斎行していると聞く。別格の扱いの福禄寿のようだ。

 

多摩の福禄寿と寿老人

多摩在で、福禄寿と寿老人を探すとなると、やはり七福神巡りを催している寺社を探すのが一番だ。七福神巡りは、居住地から近く、気軽に精々2~3時間程度で歩いて廻れるエリアを設定している。古く江戸時代から開催されていたもの、或いは町おこしや寺社おこしを狙いに近時設定されたものもあり、お正月の初詣に相応しい、近隣寺社巡りの健康ウォーキングであり、縁日のお店を覗いてみるのも楽しいものである。

今回は、町田市制50周年を記念して、町田駅周辺の寺社や商店街に2008年にたてられた「原町田七福神」を訪れた。まだ13年の七福神巡りであり、寿老人が町田商工会議所ビルの横に設置してあるのも面白い。七福神が、それぞれ石造で同様の大きさで作られており、下のような様相である。

町田商工会議所横の福禄寿

 

古刹勝楽寺内の寿老人

 

多摩地域内にも、下記の通りに、七福神の設定があり、気軽な健康散歩コース巡りとして、足を延ばしてみられてはいかがでしょうか。

・武蔵野七福神        ・調布七福神

・東久留米七福神       ・原町田七福神

・武蔵五日市七福神      ・多摩青梅七福神

・八王子七福神        ・日野七福神

 

参考資料: Wikipedia、談山神社homepage他