先のブログで、かつて武蔵野市に5万人を収容できる「グリーンパーク野球場」と呼ばれる球場があったことを紹介しました。当時、大人数の観客を球場へ輸送するために鉄道も敷かれていました。
その鉄道が、「三鷹駅」とグリーンパーク野球場入り口近くに作られた「武蔵野競技場前駅」とを結ぶ武蔵野競技場線です。
武蔵野競技場線は、戦前、武蔵境駅と中島飛行機武蔵製作所間に敷設されていた引き込み線を活用した3.2kmの単線・電化線でした。グリーンパーク野球場の開場に合わせて昭和26年(1951)4月に当時の国鉄中央本線の支線として開業しました。
しかし、球場は設備の悪さなどにより昭和31年に閉鎖。これに伴い競技場線も昭和34年(1959)廃線となりました。
競技場線の跡地はどうなったでしょうか?武蔵野競技場線の跡地は、その後、国鉄から払い下げられ大部分が遊歩道として整備され今日に至っています。三鷹市内の歩道は堀合(ほりあわい)遊歩道、武蔵野市側はグリーンパーク遊歩道と呼ばれて多くの人々に散策路として親しまれています。
堀合遊歩道
堀合遊歩道は、中央本線沿いにある三鷹市域の「堀合児童公園」をスタートして玉川上水に架かる「ぎんなん橋」に至る約600mの遊歩道です。線路跡を思わせるおよそ1.5m幅の小道が木立の中をゆるやかに北へ向かって続きます。
堀合遊歩道には、かつて国鉄保有地であったことを示す「工」マークの境界杭が数か所歩道脇に残っています。「工」のマークを探しながら歩くのも一興です。
玉川上水に架かる「ぎんなん橋」は、中島飛行機武蔵製作所への引き込み線で使われた橋台を再利用して架けられた橋で、床板に線路が設けられています。
過去をふり返らせる粋な計らいですね。
グリーンパーク遊歩道
ぎんなん橋を渡ると、武蔵野市域に入ります。「境浄水場」を左手に見て、道なりに進むとグリーンパーク遊歩道の道標が目に入ります。グリーンパーク遊歩道はぎんなん橋から都立武蔵野中央公園に至る約1.5㎞の遊歩道です。歩道のゆるやかな屈曲に線路の走行をイメージしながら歩を進めると、まもなく「グリーンパーク緑地」が現れます。遊歩道の左右に緑地が広がり、ハナミズキ、ツツジ、ハギなどが四季に彩りを添えてくれます。
緑地の景観を楽しみながら先に進むと、「関前高射砲陣地跡」に到着します。太平洋戦争中、米軍機の空襲に備えて、この地に日本軍によって作られた高射砲や機関砲の陣地跡です。高射砲は地上から米軍機を撃墜するための大砲でしたが、砲弾は上空1万mを飛ぶ米軍機にはほとんど届かなかったとか。
高射砲陣地跡は、今日、すべり台などの遊具を備えた児童公園となっており、近隣の子供たちが歓声を上げながら遊んでいます。
関前高射砲陣地跡を後にして歩を進めると、「関前公園」に入ります。関前公園には、夏は子供たちの水遊びで賑わうじゃぶじゃぶ池や、ヤゴやアメンボの観察ができるトンボ池などがあります。関前公園は子供たちの水遊びや親子で自然観察が楽しめる親水施設を備えた公園です。
関前公園から先もグリーンパーク緑地が続きます。ベンチが置かれていて一休み。
グリーンパーク緑地を抜けると、都立武蔵野中央公園の入り口です。武蔵野中央公園の表示板が目に飛び込みます。ゴールです !
参考資料
*第37回企画展 野球と鉄道 幻の球場と思い出の球団
*地理院地図