戦後の民主化と新田開発の研究
戦前戦中の全体主義から敗戦後GHQの指導のもと民主化が始まりましたが、歴史研究の世界も民主主義的な研究が始まりました。菊地利夫著「新田開発」はこの分野の必読書とされていますが、その中で民主主義的な主張を見つけました。きょうはそんなお話しをしたいと思います。
菊池利夫著「新田開発」
新田の特質としてよく、財政を食い尽くした幕府や諸藩、力をつけた商業資本家の新しい投資対象としての新田開発を語られてきたが、この本では地縁的紐帯や大土地所有の土豪の支配が濃かった古村の支配からの小農民の解放地としての新田開発も提案されている。
新田の歴史的意義
① 農村社会内部の影響
② 近世初の小農民の自立
③ 当初低かった生産力の向上
新田開発の区分
① 前期‥寛永寛文
② 中期‥享保年間
③ 後期‥寛政以降
中期の新田開発の特質
前期の新田開発は主に水田に重点を置き堤川除普請など小農民の自立をめざしたが対象は牢人を含む直接生産者でうまくいかない場合も多かった。それに対して中期の新田開発は畑中心で米だけでは無く商品作物の供給源として、また畑作の年貢徴収も重大になっていった。その結果、享保期には年貢が増収した。幕府はより多くの年貢の増収を画策したがそれには失敗した。
しかし小農民の旧村での名主百姓の下人としての小農民の自立は進んでいった。
小農民の名主層からの自立
戦後の民主的な研究として、このように大農家である名主層からの自立という民主的な研究提案となった。このように世の中の政治や風潮が研究やその提案に影響を与えることがあるのではないだろうか。
・