大國魂神社の年間行事のひとつである「すもも祭り」は、例年7月20日に斎行される。
関東地方の梅雨明けや夏休みに入る時期と重なるこの祭りを迎えると、本格的な夏の訪れを感じてきた。もっとも最近では梅雨明けの時期もよくわからなくなってきて、その感覚が失われそうであるが。

すもも祭りの由来
その起源は源頼義・義家父子が、奥州安倍氏平定(前九年の役)(1051~1062)の途中、大國魂神社に戦勝祈願をした。凱旋の帰途、戦勝御礼詣りをし、神饌の一つとして李子(すもも)を供えたことに由来して、境内にすもも市がたつようになったのが、祭りの名前の由来である。
からす団扇・からす扇子の頒布
すもも祭りと言えば、からす団扇・からす扇子であるが、両者に直接の関係はないとのことであるが、稲穂が実る時期を迎え、五穀豊穣を祈るというのは自然な流れだと思う。
当日は、五穀豊穣・悪疫防除・厄除の信仰をもつ「からす団扇」「からす扇子」が頒布される。この扇を以て扇ぐと、農作物の害虫は駆除され、又病人は直ちに平癒するという信仰に由来するという。
その由来について、大國魂神社HPより引用する。
そのいわれは今から約1200年前、大同2年(807年)に「古語拾遺」の神話から出ており、内容は次のとおりである。
神代の昔、大地主神が田植えをなさる時に、早乙女や田夫らを労うために牛肉をご馳走(※)した。 ところが御歳神の御子がそれをご覧になって家に帰ってそのことを御父にお告げになった。 御歳神は、これをお聞きになり非常にご立腹なされて、田にイナゴを放ち、苗の葉をことごとく 喰い枯らせてしまった。大地主神は大変に驚かれて、何か神の崇りであろうといって卜者を呼んで 占わせてみたところが「これは御歳神の崇りであるから宜しく白猪、白馬、白鶏を献じて お詫びするのがよろしい、されば怒りも解けるであろう」とお告げがあったので、その通りに したところお怒りが解けたばかりではなく、蝗の害を駆除する方法も、いろいろと教えて下された。 その方法の中に「烏扇をもって扇げ」とお教えなさったのである。
※明治に入るまでは、鳥以外の肉を食する事を嫌っていた。
玄関先に飾ると魔を祓いその家に幸福が訪れるといわれる。これを受ける人達で境内は、たいへんな賑わいとなる。その為か近年では、からす団扇・扇子の頒布については、前日から行なわれている。

私も参拝を済ませると、さっそくからす団扇を授かりに頒布所へ向かう。さて記憶では500円の初穂料だったが、800円になっていた。傍らの「からすみくじ」もころんとした愛くるしいフォルムに惹かれていただくことにする。
おみくじの結果は小吉。厄除け・悪疫防除・五穀豊穣の信仰をもつ「からす団扇」「からす扇子」を頒布していることにちなみ、からすみくじには主に「避けるべきこと」が記されているということだ。ふーん、なるほど、肝に命じます。
私は団扇を授かったが、他に扇子もあり、特製・大・小と3種類ある。ちなみに初穂料は各々、5000円、3000円、2000円である。普段使いするには、扇子小あたりがいいかもしれない。


すももの露店が立ち並ぶ
大鳥居からしばらくは、焼きそば・りんご飴・フライドポテトなど祭に付き物の露店が並ぶ。随身門に近いところには、すももの露店が立ち並び甘い香りを漂わせている。もちろん多くの人の目当ては縁起物のすももである。
さあ、どれにしようか・・。果皮が紅くて甘そうな「サマーエンジェル」という品種を購入した。5個で1300円、縁起物である。冷やして食べたが、期待どうりに甘くて美味しかった。


もう一つ名物がある。「大國魂神社氏子青年崇敬会」による「すももかき氷」である。「かき氷+すももシロップ+すもも丸ごと1つ」という代物である。
すももシロップは、爽やかな酸味とスッキリした甘さでちょうどいい。すっかりクールダウンしてくれた。
このかき氷が、大人気だった。

江戸の里神楽の奉納
神楽殿では、恒例の山本頼信社中による江戸の里神楽が奉納される。15時・17時・19時の3回の公演である。
15時の部を鑑賞した。演目は「天浮橋」(あめのうきはし)。大神の命によりイザナギとイザナミが国造りを行うが火の神を生んだイザナミが、火傷をして命を落とし黄泉の国へ旅立つという物語である。
暑い中であったが、50脚程のイスはいっぱいで多くの立ち見客が、演技に見入っていた。


<参考文献>
- ようこそ武蔵国総社大國魂神社 大國魂神社社務所
- 大國魂神社HP