ガンダム と なしのすけ の稲城

稲城には観光資源が……

わが居住地の稲城市は、昨年市政施行50周年を迎え、南多摩地区の三多摩都市として、面積では多摩地区26市の11番目、人口では18番目の中堅市である。二十数年前には、タクシーに乗って「稲城へ」といったのに、千葉の稲毛区に間違えられたりの知名度の低い処であり、市の北部を東西に走る南武線(川崎~武蔵小杉~登戸~府中~立川)は、今では新車が走る通勤列車となり混雑が続いているが、以前は山手線からのセコハン車両の田舎電車風であった。1971年から始まった多摩ニュータウンの東端で都心に一番近い住宅開発地域になって以来人口も急激に伸長して、9万余となり大台10万人まで迫ってきた。となると、稲城なら、稲城では、といって、「稲城には……がある」という集客施設や歴史遺跡が欲しい処であるが、起伏にとんだ純農村の丘陵雑木林開発地なので、稲城に世人の注目を集める材料というものはまず見当たらない。城が3ヶ所にあったとはいえ、多摩川北部を見張る砦の如きものであったし、江戸期に開削された総延長70kmの大丸用水の堰があり、三沢川のサクラ並木ありとはいえ、さほどに市外の観光客の興味・関心を勧誘するものでもない。せいぜい、東京地域ブランドの認証を得て、生産量は東京一という、なかなか時期が来ても手に入りにくいといわれる「梨」が評判なくらいか…?

というわけで、「稲城市の自然、景観、文化、歴史、農産物等の地域資源を活用し、観光事業の振興を図ることで都市の魅力を増進し、これを国内外に広く発信して稲城市の誘客を促すことにより交流人口を増やし、もって地域の活性化、市民生活の充実及び地域文化の発展に寄与することを目的とする」主旨で観光事業が発足した。

いなぎ発信基地ペアテラス

平成28年4月、JR南武線稲城長沼駅東隣の高架下に稲城の魅力をまるごと発信するランドマーク「いなぎ発信基地ペアテラス」が開業し、オープニングイベントが実施された。ペアテラスのペアは、梨の英語表記 pear を意味している。いなぎ発信基地ペアテラスでは、観光関連施設のパンフレット配布や観光スポットの紹介など、稲城の観光情報をまるごと発信。稲城市の特産品やグッズの他にも、姉妹都市や友好都市などの特産品も取り揃え、施設内には、カフェスペースもあり、ゆっくりとくつろぎながら稲城の魅力を感じられる。

メカニックデザイナー大河原邦男プロジェクト

 この「いなぎ発信基地ペアテラス」の集客目玉となったのが、人気抜群の巨人ロボットアニメ「機動戦士ガンダム」(日本サンライズが1979年名古屋テレビ放映開始のロボットアニメ、総監督富野喜幸、キャラクターデザインは安彦良和、メカニックデザインは大河原邦男)のメカニックデザイナー大河原邦男氏を中核とする「大河原プロジェクト」制作の大型ロボット・メカである。メカニックデザイナー大河原氏は稲城に江戸時代から11代にわたり住み続けている家系の出という。

大河原邦男氏デザインを感じさせる作品を稲城市内に設置することや、メカデザイナーズサミットの開催などにより、子どもや家族にとって魅力的な街づくりを行い、生き生きとした街を目指すプロジェクトを進行させようとしている。

「ガンダム」と「ザク」

稲城長沼駅前のペアテラスには、「機動戦士ガンダム」の主人公アムロ・レイが乗り込む連邦軍の新型モビルスーツ「RX-78-2 ガンダム」アムロ・レイのライバルであるシャア・アズナブルの持つ量産型モビール「MS-06S シャア専用ザク」の身長3.6m(想定実物の1/5)のモニュメントが、店舗の外郭に南向きで堂々たる体躯を披露している。お台場のガンダムはこれより大きいが単身で武器不携帯であり、大河原氏の要望する、武器を携えて活動するモビールスーツ両雄がここに揃ったことになる。

ガンダムとザクのほかに、稲城長沼駅南辺の家族憩いの広場には、大河原邦男氏デザインの「装甲騎兵ボトムズ」に登場する「スコープドッグ」のロボット3.8mが威容を誇っており、稲城長沼駅とそこに集う家族達を外敵から守衛しているようにも見える。

また、稲城長沼駅西隣の南武線南多摩駅北口にある大丸用水分量橋公園を通勤通学する市民を見守っているのは、大河原氏デザインのタツノコプロ制作のテレビアニメ「タイムボカンシリーズ  ヤッターマン」の犬型メカ・ヤッターワンで、2.0mの勇姿を見せている。

 稲城市「デザインマンホール蓋」を市内5ヶ所に設置

ここのところブームが拡散している、新しいデザインのマンホール蓋にも取り組んだ。「メカニックデザイナー大河原邦男プロジェクト」の一環として実現し、東京都の「平成31年度デザインマンホール蓋設置・活用等推進事業費補助金」の助成を受けて実施され、観光資源としてデザインマンホール蓋を活用し、下水道に対するイメージを向上させるとともに、観光客の誘致や地域活性化を目的としている。蓋のデザインは、右側に市章と多摩川が、下部に武蔵野の大地があしらわれている。高橋市長の「稲城市のマンホール蓋と観光スポットを巡って、宝探しのような感覚で楽しんでもらえれば」と設置への期待が込められている。

ガンダム…JR南武線稲城長沼駅(いなぎペアパーク傍)

                                                                     

 ・マグナムエース …JR南武線矢野口駅(北口)

 

 

・ ヤッターワン …JR南武線南多摩駅(南口)

 

 

・スコープドッグ …京王相模原線若葉台駅 北口ふれあいロード

 

 

稲城なしのすけ …京王相模原線若葉台駅 北口ふれあいロード

 

 

稲城なしのすけの展開と活躍

「いなぎ発信基地ペアテラス」に登場した稲城市の顔=キャラクターたる「稲城なしのすけ」が、前掲の京王線若葉台駅北ふれあいロードに設置されたマンホール蓋キャラクターに登場している。

上は「稲城なしのすけ」と「1/1ハロ」

稲城市の梨は、果汁が豊富で甘味も多く、シャキッとした食感の肉質も大好評。収穫期には、押立・矢野口から東長沼あたりの梨園でさまざまな梨が直売され、はるばる市外から買いに来る人たちも多く、大賑いである。特に、ブランド「稲城」の梨は、市内で創出された品種で、みずみずしく上品な甘さ、そしてソフトボールくらいの大きさにびっくりさせられる。そんな、稲城の名物をキャラクター化したのが、「稲城なしのすけ」。大河原邦男さんとマルチクリエイター井上ジェット氏のデザインによる、市の公式イメージキャラクターであり、本体は梨型メカである。市内を動き回ると、道路標識や各施設案内に、市内のコミュニティバス iバスの側面に、市役所の車に、さらにいろいろな広報紙誌やパンフレットにと、可愛らしく陽気でお茶目な容姿で市内を大いに賑わしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中でも、下の写真の上から順に、南武線の南多摩駅、稲城長沼駅、矢野口駅の駅頭に設置された時計台は、稲城なしのすけと時計が並んでデザインされ、通勤通学者に便利に利用され、子供達の人気者になっている。

さらに謎キャラ降臨!    サイクルレガシーモニュメント

稲城市は、自転車のまちでもある。市内中央を東西に貫く南多摩尾根幹線道路は、よく整備され、適度な傾斜で道幅も広く、晴れれば富士山が見えることからサイクリストの評判も高く、土日には多くの休日サイクリストが集まっている。東京オリンピックでも、市内の一部が自転車競技のコースとして利用された。

そこで、昨年の6月に稲城サイクルカフェがオープンした。稲城中央公園のくじら橋を望む尾根幹線道路沿いの、「ZEBRA Coffee&Croissant 稲城中央公園店」で、店舗近辺にはロードバイクやクロスバイクを駐輪できるサイクルスタンドが設置されており、近隣住人を含め、多くのサイクリストの高い評判を得ている。その店舗前に、突然登場したのが、新しいキャラクターロボットで、凛々しく力強いキャラクターのようだ。名前はまだない、募集中と聞く。 これからの活躍を期待しよう。

稲城市のキャラクター展開プロジェクトはこれからどう進むのか? 「稲城市には、観光名所や歴史遺跡はさほどではないので、集客に役立つ」としていた。アニメ聖地選定対象にはならないものの、40年前から人気を集めているアニメキャラクターで、両親の馴染んだSFヒーローが子供たちのヒーローとして再登場し、親子で共有するヒーロー勇姿の活躍に、世代を継続した家族たちの暖かい連携生活が支えられる、そういう生き生きとした街づくりに役立つものと期待できるようにも思う。次の企画を楽しみにしていきたい。

それにしても、稲城市キャラクター展開が、市北部の南武線沿い中心で、中央部では若葉台駅近辺だけなのは、なぜなのだろうか?

現在は、人口増と都市化が進み、漸く様々な飲食店が増えてきている中で、「さあ稲城でwithカレー」と銘打った「カレースタンプラリー2021」がこの1月30日迄行われ、市内の23店舗のカレーに親しもうと宣伝が繰り広げられている。さてさて、馴染みのない店舗を探して、市内を踏破するかな……

 

 

 

資料: 稲城市・稲城観光協会homepage、各種Wikipedia、広報いなぎ、稲城市各種パンフレット、etc