オニグルミ(和グルミ)~「開花から結実と生きる術」~

オニグルミは人間が食べられるクルミがなる野性の落葉樹であり、縄文時代から食べられてきた天然食品である。現在、日本国内で出回っているクルミの多くはシナグルミ、テウチグルミなど外来種の産物で、これらと区別するためオニグルミは「和グルミ」とも呼ばれている。“オニ”が付く厳めしい名前であるが、その理由は果実の表面に溝があり、これを鬼に見立てたという。雌雄同種で果実は房状に実り、熟すと一個ずつ落下する。
          【たわわに実ったオニグルミの実】

オニグルミには「オメガ3脂肪酸」という物質が多く含まれ、血管を柔らかくする効果があると言われている。又、悪玉コレステロールと中性脂肪を下げ善玉コレステロールを増やす効果があるという。
調理方法としてクルミパン、クルミ餅、クルミ味噌等いろいろな食べ方があり優良な食材である。又、すり鉢を使ってクルミの粉を作り、クルミ和え等クルミ料理として利用されている。

☆花が咲く時期・・・
花期は5~6月で雄花は黄緑色で枝の先に垂れ下がって咲く。雌花は枝先に上向きに赤い色の花柱が2つ出る。
       ↑上の写真・・雄花    ↓下の写真・・雌花

この時期に起こる面白い現象は、雄花が咲いた後に雌花が咲く木があれば雌花が咲いた後に雄花が咲く木がある、というように雌雄の花が咲く順序が違うことが起こる。このことは互いに花粉を助け合っているのではないかと考えられている。

☆果実がなる時期・・・
樹上で受粉して7~8月に果実ができる。オニグルミの果実は緑色の厚い皮に包まれている。皮には果実を守るため「タンニン」という物質を含み、虫や動物から守っている。果実の成分は、良質のたんぱく質と脂肪分を含んでおり人間はもとより動物にとっても良質の貴重な食べ物である。
果実を覆っている殻は、たいへん硬く虫の侵入を阻止することができ、2~3年地中に埋まっていても発芽することができる。
            【オニグルミの実】
          【食べられる実がギッシリ!】

☆オニグルミの生息範囲の拡大手段とは・・・
⓵ユグロンを発散!
オニグルミは他の樹木が嫌う物質=ユグロン(オニグルミの葉に含まれている物質で他の植物の成長を阻む物質)を出して他の樹木を寄せ付けない!オニグルミは陽樹で川原に多く生息している。河原は洪水が起こると川岸が削られて新しい河原ができる。こうした場所では日当たりが良く10年で10m程に成長する。又、オニグルミにとって河原は水分が豊かで湿度も高く、冬芽の乾燥を防いでくれる良い場所でもある。
⓶アカネズミ(野ネズミ)との共存共栄!
河原にはアカネズミが生息しておりオニグルミが大好きである。オニグルミの実はたいへん硬く、多くの動物は食べられないがアカネズミは強力な歯で穴をあけて実を食べることができる。しかし、保存場所を忘れたり食べ残しが発生する。オニグルミにとっては此のことが好都合であり、忘れられたり食べ残った実が発芽して分布を拡大していく。
⓷水に浮く利点!
オニグルミの殻の内側には空洞があって水に浮く。洪水が起こると河原に落ちていた実が下流に流されて分布を拡げる。洪水の土砂でオニグルミの実が埋まったりするが、オニグルミは地下30㎝もの深さから発芽することができ、生息範囲を広げることができる。

参考文献
・樹木の個性と生き残り戦略 渡辺一夫著、築地書館
・あきた森づくり活動リポートセンター 樹木シリーズ・オニグルミ