イチョウは雌雄異株の落葉植物で30m程の高木となり、種子となる部分が露出している裸子植物である。盛夏のこの時期、イチョウはたくさんの葉が茂り、幹・枝は濃い緑色の葉に覆われている。イチョウは神社、寺院に名木・記念物として多摩各市町村で見られる身近に感じる樹木である。
『夏の陽を浴びるイチョウの葉』
◯生きている化石とは⁉
イチョウは、約1億9千万年前から1億4千万年前まで続いた中生代ジュラ紀に繫茂していたことがこの時代の化石が出土して判明している。
このジュラ紀は恐竜が闊歩していた!イチョウの実は、恐竜の貴重な食料となって、タネであるギンナンは糞と一緒にばらまかれ広く分布した。
やがて、地球は氷河期となり、冷たい気候に耐えられずジュラ紀に17種あったと言われるイチョウは絶滅した。ところが、この厳しい環境の中、比較的温暖であった中国大陸で1種のみが種の継続ができ生き延びて中国全土に広まったと云う。日本には室町時代の15世紀頃に中国から伝わったという説が有力である(万葉集、源氏物語にはイチョウの記述はない)。
絶滅寸前だったイチョウが、再び世界中に広がり各国で人の手によって植栽されてきたのは、ドイツの植物学者・ケンペルの存在がある。ケンペルは日本の鎖国時代、長崎の町を散策しギンナンが実る樹木をスケッチして、日本という国を海外に紹介する時にイチョウも紹介した。
日本各地で植栽されたイチョウの天然記念物や名木が見られ、イチョウは国際保護連合(IUCN)により「野生絶滅危惧種」に指定されて「生きている化石」と言われている。
◯雌木が精子を作る⁉
4月ころ、雌花には風によって飛んでくる雄花の花粉が付着する。花粉は雌花の先端にある胚珠(種子となる部分)の穴から中に入る。そして、胚珠の中で8~9月頃になると花粉管(花粉が発芽して伸びる長い管)を伸ばし精子が2個できる。精子は泳いで胚珠にある卵細胞に入り受精が成立する。胚珠には「胚=新しい個体に育つ部分」と「胚乳=芽が育つのに必要な養分を貯える部分」があり、胚珠は大きくなって秋にはギンナンとなる。
東大附属の小石川植物園には、精子発見の大イチョウ(雌株)がある。明治29年(1896年)、このイチョウを研究していた職員であった平瀬作五郎氏がイチョウにも精子が存在することを発見した。このことは、世界的な発見で生物学上の偉業とされている。
園内には昭和31年(1956年)に、このイチョウの下に「精子発見60周年記念碑」が建立されている。このイチョウの樹齢は、約300歳と推定され、幹回り4.9mの大木となっている。
上が雄花 下が雌花
参考資料
・きこりんの森 森の図書室
・イチョウの大冒険 橋本図書館
・東大附属小石川植物園 精子発見のイチョウ,雌雄の写真