切通しの旧道沿いにひっそりと佇む里山があり、「かたかごの森」と看板がでています。名前に惹かれて調べてみると、町田市公園緑地課のもとボランティア団体「町田かたかごの森を守る会」の方々により保全活動が行われている里山です。コナラ・クヌギ・ヤマザクラなどで構成される雑木林の北側斜面にあり、林床にはカタクリやタチツボスミレ、ニリンソウ、ワダソウ、ヒトリシズカなど多摩丘陵を代表する貴重な植物が自生しています。
カタクリの開花時期に合わせ3月末から4月にかけて、1年間に10日ほど開園される森なのでした。
今年は3月28日から4月4日まで開園とのことで、訪ねてみました。
白を基調にした可愛らしい建物「かたかごの家」は、管理棟でした。道路の拡張工事に伴い、「かたかごの家」も建て直しされたそうです。森の名前にもなっている「かたかご」(堅香子)はカタクリの古い呼び名です。(研究者により他説もあるようですが)
万葉集にも1首ですが、大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ歌があります。
もののふの八十娘子らが汲み乱ふ寺井の上の堅香子の花
(大勢の若い娘たちがやってきて、入り乱れるようにして水を
汲んでいるが、井戸の傍に咲くかたかごの花の美しいことよ)
入園料は無料ですが、受付で保全活動へのカンパを募っていました。ガイドブックを購入したおつりをカンパさせていただいて入場しました。
園路に入ると、カタクリ、ニリンソウ、タチツボスミレが目に飛び込んできました。
タチツボスミレの色に心惹かれながら、園路を進むとヒトリシズカ、タマノカンアオイ、ランヨウアオイがみられます。植物に不案内な者としては、名札が設置されているのもありがたいです。タマノカンアオイは、「多摩・武蔵野検定」の勉強を通して知りました。タマノカンアオイの写真を撮っている自分が成長?したようで、ちょっと嬉しい気分です。
最近は各所での保護活動などにより目にする機会の増えたカタクリですが、昔は片栗粉の原料だったということ位しか知りません。それでこの機会にちょっと調べてみました。
カタクリの一生
カタクリは開花するまで、7~10年かかるといわれます。
発芽した一年目の春は、細い長さ5cmから10cmの松葉のような葉を伸ばして光合成を行います。
発芽して2年目以降は、楕円形の葉一枚だけで過ごします。カタクリは早春のわずか2ヶ月くらいしか地上に姿を現しません。この一枚の葉で2カ月の間に光合成を行い、鱗茎(りんけい)と呼ばれる小さな球根に養分を蓄えながら開花の時を待ちます。
地下茎は意外と深く、鱗茎の姿がクリの片割れに似ることから「片栗」の意味で名づけられたといわれています。
鱗茎から抽出したデンプン粉を片栗粉といったのは、よく知られた話です。現代では馬鈴薯由来がほとんどですが。
成長したカタクリは3月下旬、二枚目の葉を伸ばします。葉を大きく広げ、10cmほどの花茎を伸ばし、薄紫からピンク色の花をひとつ咲かせます。7~10年かけて蓄えた栄養で開花させますが、その後は毎年花を咲かせることができ、寿命は40年程だそうです。
早春の里山を彩ってくれるカタクリですが、本格的な春が訪れる頃には葉も枯れ果てて、初夏には地上から姿を消してしまいます。
カタクリのように早春の短い期間だけ姿を現す草花を「春の妖精」(スプリング・エフェメラル)というそうです。
そんなカタクリの花言葉は・・・「初恋」「寂しさに耐える」
例年ですとボランティアによる案内や野草茶の提供、山菜の天ぷらの販売を行っているようですが、今年は昨年に引き続きコロナ禍のために見合わせでした、残念!!
約10日間の開園ですが、毎年1,000人程が訪れるそうです。