京王高尾山口駅の前に横たわる里山にポツンと色づいた木が出現している。
眼を凝らしてみると、コナラの「ナラ枯れ病」であることが分かった。
今年の夏、多摩地区の里山・雑木林で発生しているのが目撃されており、こ
のナラ枯れ病は「カシノナガキクイムシ」という昆虫が関わる伝染病である。
この伝染病は、「高温少雨」の年に多く見られ、今年の東京周辺はこの
条件に合致したようである。
《カシノナガキクイムシってどんな虫❓》
体長は4~5㎜の黒い円柱形のカブトムシの仲間。キクイムシとい
うので木を食べると思いがちであるが、木を食べるのではなく幹を
かじって孔を開け、この孔にアンブロシア菌(カビの仲間)と呼ばれ
る共生菌をはやしてそれを餌として育つ甲虫である。
《令和2年8月の天候の特徴 気象庁=令和2年8月報道発表資料より》
〇気温・・・全国的に高く、東・西日本では記録的な高温となった。高気圧
に覆われて厳しい暑さの日が多かった東・西日本ではかなり高く、1946年の
統計開始以来、8月は東日本では1位、西日本では1位タイの高温となった。
〇降水量・・・東・西日本の太平洋側では記録的に少なく、日照時間は記録
的に多かった。高気圧に覆われて湿った空気の影響を受けにくく晴れた日が
多かったため、月降水量はかなり少なく1946年の統計開始以来、8月として
東日本太平洋側で1位、西日本太平洋側では1位タイの少雨となった。
《ナラ枯れ病発生のプロセス》
1、6月~7月 カシノナガキクイムシのオスが健全なコナラの木に
飛来して孔を掘る。孔の入り口付近に木屑(フラスと言う)が白く散乱する。
2、6月~8月 カシノナガキクイムシはフェロモンという物質を発散して仲間を集める。
3、8月~9月 穿入する時にナラ菌を運び込む。このナラ菌の繁殖により木の組織である道管が詰まり木は水不足となる。すると、急激に弱り枯死する。
4、10月~翌年 幼虫は枯らした穿入木で繫殖し越冬する。翌年、春に成虫となったカシノナガキクイムシは、初夏に健全なコナラの木に飛来し子孫を繋ぐ。
参考資料 森林総合研究所HP、気象庁HP