内藤礼と中村桂子・生命誌は同じこといっている?
美術家内藤礼の東博の2024年8月の月例講演会に行ってきました。その時のレジュメと、生物科学者中村桂子さんのお話しが似ていたので、今月はそのことについて書きますね。
内藤礼「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」
中村桂子「動物が進化するということは38億年かけて生物が多様性になったということ」
まず美術家・内藤礼さんから
内藤礼とは
内藤 礼は、日本の美術家。ひそやかで繊細な造形作品と、それを配置し鑑賞する緊張感のある空間からなるインスタレーション作品などを制作。広島県広島市出身、広島女学院中学校・高等学校卒業。1985年武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科卒業。2018年度毎日芸術賞、芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
ウィキペディアから
東博の展示
見る順番:①平成館 企画展示室→②本館 特別5室→③本館 1階ラウンジ→「銀座メゾンエルメス フォーラム」→②本館 特別5室→①平成館 企画展示室 が推奨されています。
期間:2024年6月25日(火) ~ 2024年9月23日(月・休)
本展は、当館の収蔵品、その建築空間と美術家・内藤礼との出会いから始まりました。内藤が縄文時代の土製品に見出した、自らの創造と重なる人間のこころ。それは、自然・命への畏れと祈りから生まれたものであり、作家はそこに「生の内と外を貫く慈悲」を感じたといいます。会期中、自然光に照らし出される展示室では、かつて太陽とともにあった生と死を、人と動植物、人と自然のあわいに起こる親密な協和を、そっと浮かび上がらせます。本展を通じて、原始この地上で生きた人々と、現代を生きる私たちに通ずる精神世界、創造の力を感じていただけたら幸いです。
歴史の展示が多い東博の企画展ですが、珍しく美術作品の展示・他会場との連携となっています。
連携企画
本展は、エルメス財団と共同で企画されました。
展覧会は、同じタイトルのもとに、当館からはじまり、銀座メゾンエルメス フォーラムへと続きながら、再び当館へと戻る円環として構想されました。
「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」
会期 2024年9月7日(土)~2025年1月13日(月・祝)
会場 銀座メゾンエルメス フォーラム
来歴
1961 広島に生まれる。なんと11月19日イサム・ノグチと同じ。
1985 武蔵野美術大学卒業(造形学部 聴覚伝達デザイン学科)
卒業制作を元に佐賀町エキジビット・スペースでグループ展
1986 個展「Apocalypse Palace」1992より海外で展示、1995より美術館での個展
1997 「地上にひとつの場所を」ヴェネチア・ビエンナーレ日本館
2001 「きんざ」≪このことを≫常設設置(香川県直島)
2009 「すべての動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している」神奈川県立近代美術館 鎌倉
2010 「豊島美術館」≪母型≫開館(香川県 豊島)設計:西沢立衛
2014 「信の感情」東京都庭園美術館
2018 「明るい地上には あなたの姿が見える」水戸芸術館現代美術ギャラリー
2020 「うつしあう創造」金沢21世紀美術館
2022 「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している 2022」神奈川県立近代美術館 葉山
2023 「breath」ミュンヘン州立版画美術館(ミュンヘン ドイツ)
ほか、タカ・イシイギャラリー(東京)
LOOCK(ベルリン)で古典多数
2024 「内藤礼 生まれておいで 生きておいで」東京国立博物館
内藤礼について
めぐる言葉、めぐる素材:「依り代(よりしろ)」としての
題名(タイトル)から
「生の外」からのまなざし=「慈しみ」(慈悲・慈愛):与えられた生にたいする「返礼」
恩寵/精霊/母型/返礼/color beginning/地上にひとつの場所を/地上はどんなところだったか/世界に秘密を送り返す
無題あるいは[素材=題材=見立て]*風船、杖、座、ベンチ、まぶた。とんの毛 etc.
素材(マテリアル)から
地上に遍在するものたちから「つくらない」美しさを取り出すこと
a.フランネル、毛糸:柔らかさ、やさしさ、空気感
b.種子、花、木・枝、石、水:自然、生をあらわす←プリント布(植物柄)、染色布
c.ビーズ、ガラス(瓶)、電気照明:光をとらえる・あらわす
d.バルーン(ゴム風船)、リボン、糸、鈴:空気・風をとらえる
e.色彩(赤鉛筆・絵具、染色布、リボン・プリント布・毛布):生と祝福
f.鏡、ガラス(窓):反射(による遮蔽・不可視性)をあらわす
g.テグス、ガラス(瓶)、木(ベンチ、台座、壁):存在を支える存在
h.空間、建築、その文脈と特性(site specificity):歴史性と現前性
「生まれておいで 生きておいで」という場所
題材(モティーフ)
死者(=生の外)への「捧げもの」「飾りつけ」、「見立て」「ままごと」の無垢性
→死者/未生者からの「生へのうながし」への転換
杖、枕、瓶(水)、「通路」「まぶた」→土版、母体、足形、骨、風景(画)
構成(コンポジション)
「生の外」と「生の内」の往復、巡礼としての順路←未来の追憶としての体験
呼びかけとしての「おいで」:出迎え、送り出しとしての言葉と場所性
ある日ふと、臨終を指す「息を引き取る」という言葉の使い方を思い出し、一つの転換が起こる。長い間、死者のために用意してきた枕は、むしろ彼らの息、死者の生だったのではないか。慈悲の働きかけは、死者から生者へと向けられることとなった。声が聴こえてならない。「生きなさい。生きたのち、自らの生のもとに安らげるのですから」内藤礼 2023(ミュンヘン展図録英訳翻訳)
「作品のなかにある何かが一日一日生きるように私をうながす」内藤礼 2024 東京国立博物館展図録再録
参考文献
・内藤礼/聞き手:中村鐵太郎『内藤礼』〈母型〉(神戸芸術工科大学レクチャーブックス)左右社、2009年 *アーティストトーク記録
・内藤礼『内藤礼 1985-2015 祝福』millegraph、2015年 *作品集
・内藤礼『空を見てよかった』新潮社、2020年 *自著テクスト集
・「コレクション展「すべて動物は、世界の内にちょうど水の中に水があるように存在している 2022」資料」神奈川県立近代美術館、2022年 *pdfでWEB掲載
・『内藤礼 生まれておいで 生きておいで』HeHe、2024年 *東京国立博物館展図録
・「TOKYO ART BEAT」2024年
参考
三本松倫代 東京国立博文館 月例講演会 2024/08/17 レジュメ
生命誌(中村桂子)
わたしはこの秋に発刊する野川絵図のために、「なぜ野川最源流部をコンクリート三面張りから土の多自然川へしなければならないか」を考えていました。治水、親水、生物多様といろいろ目的がでてきましたが、わたしには「生物多様性がなぜ良いのか?」への答えが見つからず、ある講演会で生物学者の中村桂子さんに思い切って聞いてきました。
その答えはこんなものでした。
生物多様性とは
中村桂子「生物多様性は良い悪いの問題では無いのです。生物がこの地球上で進化してきた、それが自体が生物多様性なのです。」
さいごに
「水が水の中に存在するように」「生物は生きていれば多様性になるのです」
生命誌について補足
生物学者である中村桂子さんの活動を紹介します。
生命誌研究館の活動