調布市の散策路「調布の歴史と多摩川を学ぶコース」を歩いてみた

梅雨が明け、暑い日が続く中、いくばくかの涼を求めて東京都保険医療局が紹介している散策路「調布の歴史と多摩川を学ぶコース」、約5.5㎞を歩いてみた。
この散策路は、調布市の南部に位置しており、多摩川を介して川崎市多摩区と隣接している。コースの途中には、コースの特色となる訪問地が数か所設けられている。


京王相模原線の京王多摩川駅で下車し、北西方向へ5分ほど歩くと、1つ目の訪問地、調布市郷土博物館に到着する。
調布市郷土博物館は、郷土の歴史や文化・自然に関するテーマの展示、講演会、体験学習会を開催しており、市内の遺跡から出土した土器、石器などの考古資料、村絵図、多摩川に生息する魚類のはく製などを所蔵展示している。今年は開館50周年にあたるということで、企画展「農村のくらしと技術 糸をつむぎ布を織る」を開催していた。1階展示室には、機織り機をはじめ布作りに係るさまざまな品が展示されていた。


調布市郷土博物館を後にして、京王相模原線のガード下をくぐり、2つ目の訪問地、映画俳優の碑と調布映画発祥の碑へと向かう。
映画俳優の碑と調布映画発祥の碑の二つの碑は、小さな児童公園の入り口に建っていた。これら二つの碑は次に向かう訪問地、角川大映スタジオが、戦前、日活多摩川撮影所であったころ、撮影所の敷地は現在の角川大映スタジオだけでなく、京王相模原線の線路付近にまで及んでいたという。この児童公園も日活多摩川撮影所の敷地の一部だった。二つの碑は、このような調布と映画の関わりの発祥の地に建てられた。
映画俳優の碑は、昭和61年(1986)、日本映画俳優協会が創立35周年を記念して建てたもので、大小3つの碑からなっている。中央に位置し、「映画俳優之碑」と記された碑には、当時の俳優協会理事長池辺良ほか往年の俳優の名前が刻まれている。「その生涯を映画に生く」と森繫久彌の筆で記された碑には、三船敏郎ほか戦後の日本映画の黄金時代から現在まで活躍している多くの俳優の名前が刻まれている。


調布映画発祥の碑は、平成5年(1993)、調布映画まつり実行委員会が調布を舞台にした映画産業の歴史を記念し、今後の振興を図る目的で建てられた。銅像は撮影機材を持つ男性を現しているという。

調布を舞台にした映画の歴史を印した碑を後にして、3つ目の訪問地、角川大映スタジオへ向かう。
角川大映スタジオは施設見学不可ということで、スタジオに入ることができなかったが、施設入り口には巨大な大魔神像と武神像が立っていた。大魔神は、昭和41年(1966)に大映(現・KADOKAWA)の京都撮影所が世に送り出した特撮映画シリーズ三部作のキャラクターとしてその名が知られている。このスタジオで製作された作品の一つ、アニメ映画劇場版「鬼滅の刃」無限列車編が子供たちに人気を博していたのが記憶に新しい。角川大映スタジオは、戦前の日活多摩川撮影所を名乗っていた時代に比べると、施設面積等規模が縮小しているように見えるが国内最大級のスタジオと最先端技術を誇っているという。


角川大映スタジオから4つ目の訪問地、彫刻のある散策路へ向かう。桜堤通りに入り、歩道を道なりに進むとまもなく1個目の彫刻が桜並木の中に現れる。
彫刻のある散策路は、桜堤通りの中に約1㎞にわたって作品を配した遊歩道で、9個の彫刻と1個のモニュメントが置かれている。
9個の彫刻には銘板が取り付けられていて、作品名と作者名が記されている。彫刻と作品名を眺めていると、作者の作品に対する想いが伝わってくるようである。これらの彫刻は、調布市が「彫刻のある町づくり~自然と彫刻の出会い~」をテーマに都内在住の作者から募集した作品の中から選ばれた。


モニュメントは、平成元年(1989)に町村制100周年を記念して作られたもので、「すてきにくらした愛と美のまち調布」をテーマに製作した。像は母親が子供を抱いている姿をイメージしているという。


彫刻のある散策路を後にして、5つ目の訪問地、日活調布撮影所へ向かう。
日活調布撮影所は、角川大映スタジオと同様に施設見学不可とのことで、スタジオへ入ることができなかった。日活は、昭和28年(1953)、戦後の映画製作を再開させるために調布市に日活撮影所を開所した。数多くの作品を世に送り出した日活撮影所は、平成24年(2012)、日活100周年を記念して撮影所名を日活調布撮影所に改めている。

日活調布撮影所を後にして、最後の訪問地、調布市多摩川自然情報館へ向かう。
調布市多摩川自然情報館は、多摩川を中心とした市内の自然環境を紹介する環境学習施設で、多摩川の魚や植物、昆虫などの実物が観られる展示室と自然環境に関する書籍を揃えた学習室を備えている。訪れた日、市内の小学生たちであろうか、熱心に館内の標本に見入っていた。

調布市多摩川自然情報館


調布市多摩川自然情報館を後にして、多摩川河川敷を歩き、京王多摩川駅へ向かって帰路に着く。多摩川の穏やかな流れを眺め、調布市で展開された映画製作の足跡に触れたことで、強い日射しの中、一服の涼風を得た気がした。

参考資料
 *調布の歴史と多摩川を学ぶコース  東京都保険医療局
 *関連事項に関するホームページ
 *Wikipedia
 *Googleマップ