武蔵国分寺種赤米のはなし(8)〜バケツ稲の土について新提案と実験・考察〜

赤米のはなしも長くなってきました。本日はイネの簡単な栽培方法であるバケツ稲について、

  • バケツ稲の用土の再利用についての新提案
  • バケツ稲の用土についての実験と考察

上記の2つについて書きたいと思います。

バケツ稲という栽培方法

赤米の栽培方法として、農業としては田んぼ、陸稲がありますが、市民が市街地で行うにはバケツ稲栽培という方法もあります。収穫はほんの少ししかありませんがベランダや庭先でも気楽に誰でもできる栽培方法として広がりをみせています。わたしもこの数年間バケツ稲栽培を行ってきました。

バケツ稲の用土について

この数年間、陸稲の連作障害に悩まされてきた経験で、稲作とくに赤米種は土を選ぶことが分かってきました。稲作は土次第で豊作にも不作にもなるのです。そこで今回はバケツ稲の用土に注目して『バケツ稲の用土の再利用についての新提案』と『バケツ稲の用土についての実験と考察』の2つについて書きたいと思います。

バケツ稲の用土の再利用についての新提案

バケツ稲を栽培した人が栽培の終了後に直面する問題として、土をどうやって捨てるかがあります。市街地だと土を捨てるのは大変ですよね。再利用したいという声をよく耳にします。そんな時に回答として一般的によく言われているものに、土を再利用する場合は用土を乾燥させて天日干しした後に新しい用土を追加して用いると良い、という話しがあります。

しかし何年かバケツ稲をやってきた経験から、ひょっとしたらこの説は違うのではないか、と思うようになりました。ここではバケツ稲用土の再利用についてまったく新しい一つの方法を提示したいと思います。

用土と稲との相性

連作障害のことを考えると、いちばん良いのは再利用せずに新しい土に全て取り換えることです。しかし土を廃棄する方法が大変だったり、前述した土との相性を考えると、もしも豊作の場合ならその土はお宝です。捨てるのはもったいないかも知れません。少しの処理を施して再利用するのも良い策かもしれません。

バケツ稲の用土の新再利用方法

(1)株は根から抜きバケツから取りだす
(2)水をバケツ一杯より多く入れて水を溢れさせる
(3)放っておいて水を凍らせる
(4)氷を取り出して(2)から繰り返す

経験上、乾燥させるよりは溢れさせた方が良いみたいです。シストセンチュウの卵(シスト)は水を嫌いますし水に浮くという特徴があります。浮いた卵を流れ出させたり氷と共に取り出した方が良いのかも知れません。

用土の乾燥は必要か

一般的な田んぼでは冬季は水を抜いていることが多いですよね。バケツ稲も冬季の後半に一回は乾燥させても良いかも知れません。ただ経験上は水を溢れさせ氷を取り出す方が良いみたいです。昨今の自然農法は冬季も湛水する農法が流行ですので「冬期湛水」と自慢するのも良いかも知れませんね。

バケツ稲の用土についての実験と考察

バケツ稲の用土は何が良いか

次にバケツ稲の用土について実験をしました。

前述したように稲は土を選びます。土によっては豊作にもなりますし、極端な不作にもなります。田んぼや陸稲での土の入れ替えは難しいですが、バケツ稲だと100%コントロール出来ます。そこで私は昨年夏にまったく同じ栽培方法で用土だけが異なるバケツ稲の2種類を栽培実験をしてみました。

このバケツ稲の用土の実験で分かったこと

桐生砂の生育の方が背丈で1.6倍生育が良かった
使用した畑土には何らかの赤米成長阻害成分があった
畑土でもバケツ稲には肥料が必要

2種類の用土によるバケツ稲実験

土の中になにか赤米の生育を阻害する物質があるのではないかと予想して2020年夏に、以下の2種類の用土でバケツ稲を栽培してみました。
・近所の植木畑の土
・桐生砂

近所の植木畑の土

近所の植木畑の土

桐生砂と砂利

桐生砂と砂利

バケツ稲の条件(共通)

・15Lの直径28cmバケツ(DCMブランド)
・鉢底石(工業用砂利)
・鉢底気体抜けホース

バケツ(15L)

バケツ(15L)

鉢底気体抜けホース

鉢底気体抜けホース

バケツ稲の肥料(共通)

桐生砂は砂ですから微量元素以外の特に窒素肥料は皆無だと思います。そこで今回は量は異なりますが2種類とも液体肥料を投入することにしました。バケツの水は捨てたり溢れさせたりしていないので投入した肥料はバケツ稲(バケツとイネ)内部に留まっているはずです。
・液体肥料(協和ハイポニカ)

ハイポニカ液体肥料

ハイポニカ液体肥料

種まき方法(共通)

土表面の直径24cm表面に2つの同心円(直径19cm大円と10cm小円)の撒き溝を描き、それぞれ1か所2粒づつ大円30か所(60粒)と小円10か所(20粒)を深さ1cm程度に浅撒きしました。桐生砂の方は保水力が低いので種まき後数日は乾燥しないギリギリの浅水位になる様に注意しました。

使用した用土

・近所の植木畑の土
毎年使っている植木畑のハコベが生えている表層の土
・桐生砂
当初は砂なので洗えるかと思いましたが、硬い鹿沼土状なので洗うことは無理でした。水入れ排水を3回繰り返して洗ったことにしました。

2種類の生育経過

8月1日種まき

こんな感じです

桐生砂。種蒔き

桐生砂。種蒔き

畑土。種まき

畑土。種まき

8月14日(2週間後)

桐生砂の方が葉幅が太く、畑土の方が少し徒長気味

手前が桐生砂、奥が畑土

手前が桐生砂、奥が畑土

8月23日(3週間後)

葉色が薄くなってきたので液肥を初投入。1週間前に肥料の方が良かった

手前が桐生砂、奥が畑土

手前が桐生砂、奥が畑土

9月12日(1ヶ月11日後)

畑土の方がに葉が目立つ。桐生砂の方は絶好調

手前が桐生砂、奥が畑土

手前が桐生砂、奥が畑土

10月15日(2ヶ月2週間)

両者とも開花。生育の違いが顕著になってきた

手前が桐生砂、奥が畑土

手前が桐生砂、奥が畑土

赤米の開花

11月15日(3ヶ月2週間)

桐生砂の背丈は100cm、畑土の背丈は60cm

左が桐生砂、右が畑土

左が桐生砂、右が畑土