多摩で雲取山を見ることのできるところ

2020年3月9日のブログで、多摩で一番高い地点は雲取山(2017m)であることを書きました。
日本で一番高い山「富士山」については、富士山を眺めることができるかどうかはその場所の大きな関心事になるのですが、多摩で一番高い山(東京都でも一番高い山)「雲取山」を眺めることができるかどうかということについては、ほとんどの人が関心を払いません。
そこで今回は、多くの方が興味を示すことはほとんどなく、したがって見えていても全く眼中になかった「雲取山」について、多摩の各地点での「見える/見えない」を探った話を書きます。

カシミール3Dを使います

この確認に使うツールは、2021年11月22日のブログにて紹介した「カシミール3D」です。
「カシミール3D」というPCソフトウェアについて改めて述べますと、「ある地点を指定したときに、その地点を見ることのできる場所を地図上に表示してくれる」PCソフトです。
ですから、「雲取山」を指定するポイントにセットして、それを望むことのできる場所を地図上に描画させれば、雲取山を見ることのできる場所と見ることのできない場所を簡単に識別することができます。


(注)地図の標高データに反映されていない「建物」や「樹木」によって遮られて見えなくなることまでは織り込むことができません。

雲取山を展望できる所

次の図が「カシミール3D」によって表示された結果です。
ピンクの部分が雲取山を展望できる場所です。

この地図によって雲取山の見える場所を概略述べると、次のようになるでしょう。
①多摩の山間部では、高い尾根筋で雲取山方面が開けている所(そのような場所はあまりない。)
②多摩の平野部では、多摩川以北の武蔵野台地面ではほぼ全域で見える。
③多摩丘陵部では、丘陵の起伏によって、見える場所はまだら模様になっている
ざっと目分量で見て、多摩地域の約1/4~1/5のエリアで雲取山を見ることができます。

多摩地域各市町村の代表地点での可視状況

それでは、もう少し細かく多摩各地での雲取山の展望可否について確認してみます。
多摩の各市町村を代表するポイントとして、市役所や町村役場の場所を選び、その地点から、雲取山を見られるかどうかを確認していきます。
なお、雲取山山頂と指定地点の間が可視状態かどうかの判定には、「カシミール3D」の機能の一つに備わっている「一発判定」を使いました。


(注)「一発判定」とは、2点の三次元の座標(緯度、経度、標高)を与えれば、2点の中間部の標高を加味して2点間が可視状態かどうかが判定する機能です。(「可視マップ」はこれを面で連続的に行って描画するソフトウェアに他なりません。)

多摩30市町村の市役所、町村役場からの雲取山の可視判定結果は次の通りです。
(〇は雲取山が見える、×は雲取山が見えない、を表しています。)

市町村地表面から地表面+1.7m
(立って見た場合)
地表面+20m
(市役所屋上から見た場合)
武蔵野市
三鷹市
小金井市
国立市
国分寺市
府中市
調布市
狛江市×
昭島市×××
青梅市
羽村市
福生市
あきる野市×××
瑞穂町
日の出町×××
檜原村×××
奥多摩町×××
八王子市×××
日野市
町田市
多摩市××
稲城市××
立川市
小平市
東村山市
東大和市×
清瀬市
東久留米市
武蔵村山市
西東京市×
〇の数1932
6地点では建物の上から見ても雲取山は見えない。

「地表面から」というのは、地図上に示されている標高から見た場合の状態で、目を地面にくっつけて見た場合ということです。ですからちょっと先に地面の盛り上がりがあったりすると、その盛り上がりで雲取山が隠されてしまうことがあります。
そこで、人が立った時の眼の高さに補整するために視点を1.7m高くして見た時の結果が「地表面+1.7m」の欄になります。
「地表面+20m」というのは、市役所の屋上に立ったとしたら、という場合を想定したものと考えてください。

雲取山を見ることのできない市役所、町村役場

雲取山を見ることのできない場所として簡単に納得できるのは、奥多摩町檜原村日の出町といった関東山地の中もしくはその縁辺部です。間近に迫った周辺の山々が邪魔をするからです。

雲取山を展望できない市役所、町村役場(6ヶ所)と邪魔をする主な山。

次にそうかもしれないな、と思えるのは、関東山地がほど近いあきる野市です。
詳しく見ると、あきる野市役所において雲取山を遮っているものは鷹ノ巣山(1737m)になります。

雲取山とあきる野市役所の2点間の断面図。鷹ノ巣山が邪魔をしているのが分かります。
あきる野市役所周辺では雲取山を見ることができません。草花丘陵の高みにいけば見られます。

同じく鷹ノ巣山周辺の山々が邪魔をしているのが昭島市です。
上の図を見ると、鷹ノ巣山周辺の山々の「陰」は国立市域まで伸びているのが分かります。

雲取山と昭島市役所の2点間の断面図。
昭島市役所周りの広い範囲は、鷹ノ巣山近傍の山の「陰」になっていて、雲取山は見えない。

八王子市役所から雲取山が見えないというのはちょっと意外だったのですが、大岳山(1266m)近くの山塊が邪魔をしていました。
大岳山の「陰」は多摩丘陵まで伸びています。

雲取山と八王子市役所の2点間の断面図。
浅川流域の低地では雲取山は見られない。大岳山周辺の山が邪魔をしている。

微妙な結果の市役所

次にちょっとややこしいのが、狛江市東大和市それに西東京市です。
地表面からは雲取山を見ることはできないのですが、人が立った状態の視点で見ると見えるようになる、という位置関係でした。

西東京市役所で詳しく見てみましょう。

地表面から見た場合。ほとんどの地点で雲取山は見られるが、地表の微妙な起伏によって見られない場所が随所にある。市役所もそのような場所に位置している。

西東京市役所は石神井川へ下がっていく斜面上に建っています。ですから目を地面すれすれに置いて眺めると、その北西側近傍のわずかな高まりが邪魔をして雲取山を見えなくしています。そこで、視点を人の背の高さまで上げると、わずかな高まりは邪魔をしなくなり、雲取山は見えるということになります。
この状況を模式的に示すと次のようになります。

もう一つのパターンは多摩市稲城市です。この二つの市役所は、多摩丘陵が邪魔をして、地上に立った状態でも雲取山を望むことはできません。しかし、市役所屋上に立てば(+20m)、多摩丘陵越しに雲取山を見ることができます。

桜ヶ丘の丘陵部が雲取山を隠している。
左上の向陽台あたりの丘陵部が邪魔をしている。

これも、模式的に示すと次のようになります。

雲取山を展望してみましょう

以上述べたことは、現地に出向かないで、PC上での展望確認作業を行った結果なのですが、私の住んでいる武蔵野市からの実際の雲取山の展望について見てみます。
雲取山から約58km離れており、気象条件によっては展望の確認がいつもできるわけではありません。次の写真は空気の澄んだ冬の日に望んだ雲取山です。はっきりと山頂を望むことができました。

2022.2.17撮影

みなさんも、一番上に掲げた「雲取山が見える場所をピンクで示したマップ」を参考にして、雲取山が見えそうな場所であれば、一度、地図とにらめっこしながら、雲取山を探してみてください。
「あっ、見えた!」という新発見ができれば、楽しいですね。


※掲載した地図、断面図はいずれも「カシミール3D」により作成したものです。