多摩御陵(武蔵陵墓地)を訪ねて、南浅川の遊歩道を歩く

 甲州街道の追分から高尾駅までのイチョウ並木が黄色く色づき始め、時折吹く風も手伝ってか落ちた銀杏が歩道一面に広がっていました。暑い日が続いていましたが、季節は秋ですね。

 このイチョウ並木の黄葉のなか、毎年新しいテーマで開催される八王子いちょう祭りは多くの人で賑わいます。

 今年は11月20日(土曜日)・21日(日曜日)に開催の予定です。(八王子市ホームページより)

黄葉し始めたイチョウと歩道の銀杏


 甲州街道、並木町の交差点から南浅川に向かいました。横山橋に出ると、川原にはコスモスが咲き、ここにも秋がありました。

 横山橋の近くに、かつて多摩御陵(武蔵陵墓地)へ向かって走っていた御陵線の高架線橋脚が遺っているというので、探して見ました。 

   御陵線は、昭和6年(1931)3月20日に京王電気軌道㈱(現・京王電鉄)が多摩御陵への参拝客のために、北野ー片倉山田-横山(昭和12年に武蔵横山に改称御陵前(昭和12年に多摩御陵前に改称)駅間を敷設、開通した鉄道です。途中、中央線、甲州街道、南浅川を高架線で渡っていました。昭和20年(1945)1月21日、戦争激化に伴って全線休止となり、戦後、復旧することはありませんでしたが、昭和42年(1967)北野-山田間の旧鉄道用地に高尾山口まで延長させた高尾線が開通しました。

 横山橋を渡り南浅川の左岸を上流に向かい歩きました。ほんの少し歩いたところの住宅街の民家と民家の間に黒い壁がみえてきました。これが探していた御陵線橋脚の遺構でした。御陵線が通っていた頃を知る貴重なものではありますが、庭先に大きな壁があることに住んでいる方は違和感がないのかしらと思いました。その一方で、庭に居座る橋脚が民家の塀であるかのように家の一部として使われているようにもみえ、なんとも不思議な気がしました。

横山橋と川原のコスモス

民家と民家の間に遺る御陵線の橋脚

橋脚の遺構

橋脚の遺構~大きく黒い橋脚とその前に並んだ可愛い鉢とが優しく調和しているようにも見えました。不思議な光景でした。

 住宅街から土手に戻り、遊歩道を上流に向かうと陵東橋という橋が架かっていました。この辺りは川の両岸の遊歩道が桜並木になっており、春、満開のときのすばらしさを思い浮かべ、その頃また訪ねてみたいと思いました。

 そこを過ぎると程なくして立派な橋が見えて来ました。武蔵陵墓地への参道の南浅川橋です。南浅川橋からケヤキ並木の参道に登り、武蔵陵墓地へと歩きました。

陵東橋辺りの遊歩道

  ケヤキ並木の参道を進み、武蔵陵墓地の入口からは京都から運ばれたという北山杉の並木の道に変わります。空気は澄み、木洩れ日以外何もない静寂の中を玉砂利を踏みしめながら歩きました。

  多摩御陵とは大正天皇の御陵・多摩陵(たまのみささぎ)であり、一般的に多摩御陵として知られているこの一帯は武蔵陵墓地といい、大正15年(1926)12月25日に大正天皇が崩御された際、新たな天皇皇后陵墓地として、当時の東京府南多摩郡横山村、浅川村、元八王子村(現・八王子市長房町、廿里町、元八王子町)に渡る地域に造営された陵墓地です。 武蔵陵墓地には、多摩陵の他大正天皇の后・貞明皇后の多摩東陵、昭和天皇の武蔵野陵、昭和天皇の后・香淳皇后の武蔵野東陵があります。

 多摩陵を初め、それぞれの御陵に参拝し、武蔵陵墓地を後にしました。

御陵入口の陵墓の説明

御陵案内図

北山杉と玉砂利の参道

多摩陵

多摩東陵

武蔵野陵

武蔵野東陵

    帰りはケヤキの参道から南浅川橋を渡り甲州街道に戻りました。資料によると、参道の途中、長房町の街中からの道と交差する地点に、終着駅の御陵前駅があったようです。この道は、橋脚を見た場所から続く御陵線の跡だったようです。先に通った甲州街道、並木町の信号の付近には、横山駅があったそうです。

    南浅川橋は大正天皇陵建設の際、東浅川宮廷駅から御陵に至る参道として建設されました。最初の橋は木製でしたが、昭和11年(1936)大正天皇十年式年祭の際に東京府により鉄筋コンクリートの橋に架け替えられました。

    甲州街道を渡った正面にあったという中央線の東浅川宮廷駅は 、大正天皇陵への御大葬に際し、昭和2年(1927)1月31日建設された皇族専用駅でしたが、戦後は殆ど使われることがなく、国から八王子市に払い下げられ、陵南会館という市の施設として開放され、利用されてきたようですが、現在は近くにある八王子市の施設の駐車場になっていました。

南浅川橋

東浅川宮廷駅から甲州街道を越え多摩御陵まで続く参道

東浅川宮廷駅跡ー駐車場になっている、写真右手が中央線

 

  大きなイチョウの木の下で、銀杏を拾いました。秋の食卓の彩りに楽しみができました。

参考資料:『八王子事典』    八王子事典の会

                   『八王子と鉄道』   八王子市郷土資料館

     『八王子市郷土資料館だより vol.102,vol.106      八王子市郷土資料館