コロナウイルス感染予防で「駅前の顔」休載と‟コメ騒動”

「いつもと変わらない1日は、特別な1日」(4月6日付、朝日新聞「折々のことば」)と脚本家の水橋文美江さんがNHK連続テレビ小説「スカーレット」の主人公に言わせていたそうだ。新型コロナウイルスの感染拡大で不要不急の外出を自主的に避け、長く自宅で恐れといら立ちを感じながら暮らす日々にこのことばを改めてかみしめた。
コロナウイルス感染者は東京で1400人に迫ろうとしている。死者は30人を超えた。全国で5000人を超える感染者、死者は100人以上にのぼる。35ヶ国以上で異常・緊急事態宣言が出て正にパンデミック(世界的な流行)に陥っている。日本は東京、神奈川など7都府県に緊急事態宣言(4月7日夕)を発し、不要不急の外出の自粛などを徹底するよう国民に求めた。期間は5月6日までの1ヶ月間。東京都も11日から対応の措置を取る。
そんな状況下でも国や東京都は、われらにジョギングや散歩をしてもいいという。「3密」(密集・密閉・密接)を避けたいが、いつも相手があることだ。相対する人々がいつ、どこで自分に近づいて来るかもしれないと思うと、うかうか散歩に出られるものではない。

多摩川の桜並木にまばらな人影(2020年3月23日、福生市)

このブログで散歩の効用を歌うには青梅線各駅の「駅前の顔」シリーズが最適だと思った。新しい光景に出会ったり、見落としていたことに気づいたりするときがある。知っているつもりでいたことに赤面することだってある。それが散歩の魅力であり、地元を知るきっかけになる。だが、感染者を増やすきっかけになりかねない「駅前の顔」シリーズを続けることができようか。休載することにした。
コロナウイルス感染拡大の勢いは、留まるところを知らない。いまもって世界各地から聞こえてくるのはオーバーシュート(爆発的な患者急増)だの、医療崩壊、ロックダウン(都市機能封鎖)だの、はたまたクラスター(患者集団)の発生でパンデミックによる混乱ぶりだ。

ウイルスの歴史は1万年前にさかのぼり、ウイルスは人類と共に生きて来た。今日、科学や医学が進歩したとはいえ、ウイルスの予防薬や特効薬が編み出せず、この事態を収束させるには人が人に近づかないという自己隔離しかない。ある救命救急センター長は「人類が初めて体験する自然災害だ」と断言している。「どんな戦争よりも恐ろしい」という学者もいる。コロナウイルスにとって、人間がゆりかごなのだ。

桜満開の時期に降雪に見舞われたのが51年ぶり(2020年3月29日、福生市)

緊急事態宣言がされる前のある日、わが家のコメびつが底をついた。コロナ騒動の落ち着きを待って郷里にストックしているコメを取りに行く計画だったが、その前にコメがなくなった。近所のスーパーマーケットへ行って目を疑った。商品棚にコメが1袋もない。マスクや紙類の商品、消毒用アルコールなどを求める人が集中したことを知っていたが、コメも買い溜めか?という状況にぶち当たった。
スーパーの近くにあるドラッグストアも同じだった。焦りに似た気持ちが沸騰してくる。運ぶ足が速くなる。2店目のスーパーにはいつも通り山積みになっていた。ホッとすると同時に『あの2店の品不足は何だったのか』。ヒヤドキの心の傷は、当分消えないだろう。緊急事態だからこそ、浮足立たないように気を引き締めようと自分を戒める。
それにしても荒れ狂う新型コロナウイルス騒動を機に、未知のものから国を守る対策など問題が山積していることが見え、人が闇雲に右往左往することを避けたいと感じた‟コメ騒動”だった。
「駅前の顔」シリーズは、電車の車掌による車内放送を真似れば「この電車は(すでに掲載した)西立川駅でしばらく停車します」ということになる。ご了承ください。

本丸に立てば 二の丸 花の中(上村占魚)

来春は、そんな桜を心ゆくまで楽しみたい……。